―エピローグ―
6月上旬、陽向が韓国へ旅だってから2カ月が経った。頑張るとはいったものの勉強は相変わらず難易度を増している。明日から中間テストなんですけど。もう無理かも。よし、音楽だ!音楽を聴こう。そう思ってスマホに手を伸ばす。間違えて開けてしまったフォトギャラリーの動画スペースに見慣れない音声動画があった。なんだろ、聞いてみよ。流れてきたのはピアノ伴奏、イントロのような場面が終わったところから歌声が聞こえてくる。紛れもなく陽向の声だった。いつ録音したのだろうと不思議に思いながら、耳を澄ませる。
♪ 太陽のように眩しくなくたっていい
月も虹は架けられる 君は君らしく
君の
今はまだ暗くても 諦めないでいて
月の輝き《ひかり》で虹を架けよう
幸せを呼ぶ景色が 君を待ってるから
moonlight moonlight shinydream
目の前の画面には〈メンバーのサンア作詞話題のバラード曲初披露〉のテロップ。曲が終わり、司会者のアナウンサーにカメラがフォーカスを当てる。
「2026年度最初のMUSIC RALLYスタートを飾ってくれたのはHI:LIGHTのみなさんで『moonbow』でした!メンバーのみなさんの信念のこもった歌詞、とてもよかったです。今年6周年のHI:LIGHTのみなさんには後ほど今ムーンシリーズとして再ブレイク中の楽曲『MOON』も歌唱していただきます!」
ステージ上からカメラに向かって手を振るメンバーたち。もうすぐ自分の番だ…。緊張を紛らわそうと髪を留めてあるバレッタを撫でる。大事なときはいつも付けているもの。これを身につけていると勇気が湧いてくるのだ。
「続いて歌唱していただくのは、共感できる歌詞で大人気!MUSIC RALLY初登場さくらさんです!」
「こんにちは、さくらです。」
客席から歓声があがる。とうとうここまで来てしまったと実感する。
「さくらさんとHI:LIGHTのサンアさんは繋がりがあると聞きましたが?」
「はい、出身が同じで。一度会ったことがあるんですけど、私が音楽の道に進むのを後押ししてくれて。」
「サンアさんはどうですか?」
「実は『moonbow』のインスピレーションは彼女から受けたんです。」
ステージ上から戻ってきていたサンアが対角線上に座る私を見つめる。
「2人が出会っていなければアーティストのさくらさんとHI:LIGHTの大ヒット曲は生まれてなかったということですね…。それではさくらさん歌唱準備をお願いします!」
緊張した足取りで私はステージへと向かう。
「春にぴったりな新曲になっています。それでは歌っていただきましょう!さくらさんで『ハナコトバ』です!」
見ててね陽向。 私、夢叶えたよ!
「聞いてください…。 『ハナコトバ』」
青春ミュージックビデオ ― 君の声は春風にのって― さかいみか @HartFlower_MIKA
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