12 恋はタッグマッチ
連行される宇宙人のごとくシャモがいずこともなく消え去るのと入れ替わりに、正門前にはビーチサッカーサークル『かしわ台コケッコー』の三人がやって来た。
〔う〕「れんちゃん、今日こそゴー君(仏像)にアタックチャンスなのら。七年越しの初恋を実らせるのら」
双子の姉である
〔大〕「前みたいに自由入場の方が楽だよな」
〔服〕「確かに
三人を出迎えた服部が、
〔れん〕「『
〔大〕「れんちゃん、ゴー君ファンなのに知らなかったの。パトカーと救急車が何台も来てスゴイ騒ぎだったんだよ」
〔服〕「あれが多分
れんはふるふると首を横に振ると、仏像のいない落研ブースをじっと見た。
※※※
プロレス同好会を引退する服部・
赤いバスタオルを首から下げた
〔長〕「お前は本当に不運な男だ。最後の最後にこの俺と戦う事になるとはな」
〔天〕「ふん。
対する
〔加〕「
二人のにらみ合いをぶった切るように、
〔衆〕「愛してるよおおお!」
〔天〕「俺もだああああ! 愛してるうううっ!」
※※※
〔青〕「さあ、開始早々に試合が動いた! 青コーナー
放送部長の
〔青〕「三、二っとここで
プロレス同好会のデモンストレーションに付き合う羽目になったれんに対して、ういと
すっかりプロレスに夢中になった二人からそっと離れたれんは、声の主に吸い寄せられるように足を止めた。
〔仏父〕「こんにちは。八月にうちの五郎君と試合をしたよね。『
〔れん〕「いえ、『かしわ台コケッコー』です」
れんは、愛しのゴー君(仏像)によく似た面差しの中年男性に目を向ける。
〔仏父〕「僕は五郎君の
『しこしこさん』モードを封印した仏像父は、激渋イケオジモード(イケボ機能搭載)でれんに微笑みかけた。
※※※
〔仏父〕「そうか。浜松から
〔れん〕「姉に言われるがままに受験したものの、特に何がやりたい訳でもなく」
メロンソーダ片手にベンチに腰掛けたれんは、まるでずっと前からの馴染みのように仏像の父と話をしている。
〔仏父〕「まだ一年生でしょ。やりたい事が見つからないのが普通だよ。オジサンだって、大学一年生の時にはまさかこんな人生になるとは思わなかったしね」
仏像の父は、『ざるうどんしこしこ@
〔れん〕「『
〔仏父〕「いやいやそれが。今やオジサンはドロップアウトと言うかアーリーリタイアと言うか、毎日が夏休みと言うか。そうは言っても就職や海外生活のアドバイスぐらいは出来るから、困りごとがあったらいつでも連絡してよ」
〔れん〕「本当に良いのですか」
〔仏父〕「大丈夫。れんさん、オジサンって生き物はね、使い倒してナンボだよ」
仏像の父はとびきりのイケオジスマイル(イケボ機能搭載)でれんに微笑みかけると、パンフレット片手にれんと並んで歩いた。
一方こちらはマイクリハーサルを終えて落研のブースに戻って来た仏像。
〔仏〕「何でうちの父親がれんさんと。どう言う事だよ」
肩を並べて歩く二人に、二学期直前に見た悪夢が重なって仏像は思わず息を呑んだ。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
※長門が『死の舞踏(s.126)』を入場曲にしたきっかけ→
https://kakuyomu.jp/works/16817330659394138107/episodes/16817330660713713468
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます