7-2 四人目のしほり(下)
〔餌〕「そう言えば、蛇って多産と変容のシンボルですよね」
一同を見渡した餌が、改まって切り出した。
〔餌〕「
〔シ〕「そんな馬鹿な事があってたまるか。ところで松田君がピンクうさぎさんと会ったのは、俺が
落語『
過去三回の体験からそう結論付けた一同は、『
〔松〕「ピンクうさぎ(
〔飛〕「四人目のしほり、つまりピンクうさぎさん(
松田君に負けるまでは、と飛島は小声で補足する。
〔飛〕「負け知らずの『天才少女しほりん』は中三の時に初めて負けた。よりにもよってわずか小六の松田君に負けたショックか、彼女はそれきりピアノを辞め不登校になったそうです」
〔松〕「飛島君、それ本当なの。コンクール荒らしがたった一度子供に負けたぐらいでまさか」
〔飛〕「子供だった『から』だよ。彼女は大人の体になって、手の大きさも体格も見えてきた。一方松田君は当時小六。これからどれほどの伸びしろがあるか分からない」
自身もピアノ弾きである飛島は、松尾の発言に思わず語気が強くなる。
〔仏〕「ピンクうさぎって、蛇女っぽくねえか。特に思い込みの強い、執念深い辺り。もしかして、『しほり』の原型が藤巻しほりで、その後の『しほり』は原型の一部分だけを受け継いだコピーとか」
〔シ〕「言われてみればバレエダンサーの藤崎しほりさんは、『しほりちゃん』と見た目はそっくりだけど雰囲気は明るいよな」
〔餌〕「『しほり』を七体集めたら龍が出たら面白いですね。いっそ七体コンプして『普通の彼女と水着デートがしたいです』って叫べばどうでしょう」
〔三〕「いやいや、
空白の一日でシャモが絵馬に書き込んだ内容と一言一句たがわぬセリフを吐いて、餌がけたけたと笑う。
その隣で、どの『しほり』が
〔松〕「言っておきますが、これはただの思考実験ですからね。
この手の話に乗りやすい落研メンバーの中で、松尾は相変わらず一人ノリが悪い。
〔飛〕「ピンクうさぎさん、つまり
飛島が恐る恐る紙袋を差し出した。
〔仏〕「『
怨念がうずまいていやがると、仏像は紙袋から距離を取る。
〔シ〕「でも、松田君は『お
〔松〕「こんなのただの市販品のチョコレートでしょ。何をビビる必要が」
松尾はバリバリとお高そうな包装紙をことさら豪快に引き裂くと、お高そうなトリュフチョコレートを無造作に口に放り込んだ。
〔シ〕「いったああああっ。
〔仏〕「またしてもヨモツヘグイを決めやがった」
〔松〕「おすそわけです。食べて、どうぞ」
引き笑いする上級生二人を横目にトリュフチョコレートの入った箱を机の中央に押しやると、松尾はぎろりと五人の高校生男子を見渡した。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
※ヨモツヘグイ 日本神話に出てくる『
※『おせち三段重』の下りはこちらhttps://kakuyomu.jp/works/16817330659394138107/episodes/16817330668607023732
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