文化祭がやって来る
8 愛しのウルスラ
週明けの部活時。
〔餌〕「あれ皆さんおそろいで。
〔樫〕「ええ、応援部は引退いたしました。ですが実は
〔餌〕「えっ、熊五郎さんが怪我でもしたのですか。いやあのヒグマの化身がまさか」
『落研ファイブっ』にビーチサッカーを教えた『奥座敷オールドベアーズ』キャプテンの熊五郎を思い起こした餌は、小さくかぶりを振る。
〔樫〕「いやいや、祖父が『
〔餌〕「愛しのウルスラ?」
〔服〕「本当にありがとうございます。これで紅白戦が出来るようになりました」
〔多〕「経験者が合流してくれて助かるよ。『
〔餌〕「えっ、『奥座敷オールドベアーズ』が解散したって本当に?!」
応援部元部長にして
※※※
〔服〕「熊五郎さんが『愛しのウルスラ』、えっとカラオケパブね。そこで大暴れして
〔仏〕「いい年したジジイが何やってるんだか。ま、そのおかげでこっちは即戦力を三人もゲット出来たって訳だ」
サッカー部との合同ウォームアップを終えた服部と仏像を、多良橋が大きく手招きする。
〔多〕「二人とも早く戻ってこーい! 今日は念願の紅白戦をやるぞ。呼ばれた順に赤ビブスと黄ビブスを取ってくれ」
〔餌〕「ハンドスプリングスローっ!」
紅白戦の一言に、待ってましたとばかりに
〔多〕「文化祭の練習はどうした。
〔餌〕「一人が好きだって言うし」
〔多〕「ああもう、ちょっと待ってろ」
※※※
〔今〕「な、な、何じゃこりゃーっ」
〔井〕「呪いの
紅白戦とクールダウンを終えてプレハブ部室に入った一同を、一面の紙吹雪が見舞う。
ハサミを手に机に突っ伏した長津田のかたわらには、一冊の古びた本があった。
【あなたも出来る 紙切り入門】
〔松〕「ネコですか」
戦術分析ノートを片手にした松尾は、一枚の紙片を拾い上げる。
〔仏〕「これ、全部ネコじゃねえか。一人でずっとコレ切ってたって事だろ。良く飽きねえな」
仏像フィギュアを作るほどの仏像フェチである事を棚に上げ、仏像はじっと長津田の寝顔を見る。
〔餌〕「津島君も長津田君も、集中力が半端ないんだね」
〔今〕「津島君ってあの後どうなったの。演芸場で出待ちして熱中症になったんだよね」
今井がカッターシャツを羽織りつつたずねる。
〔餌〕「それが、出待ちのお目当てだった
へえそりゃ良かったじゃん、と今井があいづちを打っていると――。
〔長〕「ウルスラ俺だ結婚してくれーっ!」
長津田がむくりと起き上がって絶叫するなり、再び机に突っ伏した。
※※※
〔仏〕「ウルスラって誰だよ」
〔餌〕「山下ウルスラ
〔松〕「多分違うと思います」
〔餌〕「山下ウルスラ弓香に反応するあたり、松田君はスレンダー黒髪お姉さん系美女好みと見た」
〔松〕「いやそうじゃなく」
紙ごみ拾いを手伝った仏像と松尾に
〔餌〕「それはそうとあれだけ大声が出せるなら、いつも出せばいいじゃん。『ハンドスプリングスローっ』」
〔仏〕「ここで叫ぶなよ」
商店街を行きかう買い物途中の面々が、ぎょっとした顔で
〔松〕「そもそも
『後藤、
〔長〕「それは僕の美意識が許さない。まさかとは思うけど松田君、文化祭の出し物はまさかその、年代物の漫画チックな
〔松〕「それはさすがにダメ出しされて」
〔仏〕「ダメに決まってるだろ。痛い人認定されたら仕事に支障が出るぞ」
『しこしこさん』と『みのちゃんねる』のフォロワーの時点で相当痛い人ですから何を今更と松尾は笑う。
〔松〕「で、物は相談なんだけど長津田君」
〔長〕「ヒューマン・ビート・ボックス?
松尾の提案に、長津田は生真面目そうな顔を更に固くした。
※本作はいかなる実在の団体個人とも一切関係の無いフィクションです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます