第4章 『大暴投』
-大暴投している投手-
私は、ゆかりの今の状況をそう例えた。
音が外れているし、なにより歌い方が適当で私は魅力を感じていなかった。
しかし、魅力的な低音は誰にもない個性だと思った。
だから、ゆかりにこう言った。
〝いいか、オマエは誰にも真似できない剛速球が投げられるピッチャーなんだ。
ただ、ストライクに入らず大暴投しているから、周りから評価されていない。
ストライクに入るようになれば、認めてくれる人は必ず増える。
それをこれからしていきなさい〟
ゆかりは泣いていた。
自分の声が嫌いで、レッスンでは否定されて来たとも話していた。
それを、認められるのが嬉しいと言った。
すこし、安堵したのか、こわばっていた顔が、やや優しくなったように見えた。
ただ、そうは言ったもの、どうやって外している音程を直しながら、魅力を損なわずに歌唱力をあげていくのか。
かなり悩みどころだとも感じていた。
というのも。
私は、ある程度歌える人に演出面から見える歌唱レッスンをしてたのであって、ボイトレスクールや、これから歌うようなレベルの人にちゃんと教えた事など無かったからだ。
課題は山積み。
ある意味、未知の戦いの始まりだった。
私は、動かされた ~依祈縁 サイドストーリー ~ @tv_gandhi
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