01-7

「宮部様。貴方は自分の過ちによって大切な存在を失ったと思っていませんか?」


「え」


「ここからお話する内容は、わたくし個人が宮部様に抱いたものです。違っていたらすいません」


軽く咳払いをし、空気を支配していく。


「宮部様は、あの日公園に呼び出していあなかったら、あの時間を避けていれば…、とご自身のことを責めていらっしゃいませんか」


「どういうことです?」


「わたくしは、その考えは間違っていると思うのです。あの日、宮部様が公園に呼び出さなかったとしても、あの時間を避けたとしても、相手様の方が公園で会うこと、そして時間も、全て指定してきます。つまり、宮部様と相手様は同じ場所、同じ時間で会う運命だったということです」


「どうして分かるんですか?」


「わたくしは死後の世界で、田仲真里那様の前に姿を見せたことがありますから」


唐突に言われたこの一言で、僕は言葉を失った。高い位置から降り注ぐ太陽の光は、僕にだけ影を生む。


「田仲様は、宮部様から告白の返事を受ける前日を指定して戻られました。宮部様との、メッセージのやり取りを近くで見ていたのですが、田仲様は先にメッセージを仮入力していたのです。そこには待ち合わせ場所の公園と、待ち合わせの時間が打ち込まれていました。宮部様が指定してこなかった場合に、田仲様はメッセージを送ることを決めていたのです。しかし宮部様から仮入力と同じ内容のメッセージが届いたことにより、田仲様は送ることなく返事をしたのです」


「そんな、そんなはずは!」


「わたくしの言っていることが信じられないのですね。わたくしの言っていることが事実かどうかをお確かめになりたいなら、宮部様ご自身が過去へ戻るという方法しか残っておりません」


「そんなこと言われても」


「宮部様。過去に起きた出来事の結末を変えることはできません。しかし、宮部様に与えられた試練を乗り越えた先には、ご本人様以外、誰にも味わうことのない未来が待っているのです。哀しみ、怒り、苦しみを少しでも明るく捉えられるのなら、幸せなことだと思いますよ」


「僕にだけ待ってる未来…」


「はい。宮部様、過去に戻られて、ぜひ強くなってください」


頭の中にあった選択肢は、いつの間にか一つに絞られていた。

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