第6話 幻想
「まずはあそこに行こうか」
紫青は莉乃の手を引っ張って連れて行こうとする。
莉乃もそれに抵抗せずに引っ張られる。
そして連れてエレベーターが2階と表示した場所に降りる。
「ここは?」
「ここは受付でここで申請すれば【八咫烏】に名前が登録されるからあっ本名はだめだよ自分で偽名を決めてね」
「わかった」
不意に紫青の携帯がなる。
どうやら電話がかかってきたようだ。
ポケットから携帯を取り出し電話に出る。
「もしもしはいあっ了解じゃあ解除していいねわかった。え何はぁー嫌だよへいへいわかりました。ごめんりのちゃん向こうに行かなくちゃ行けなくなった、これ見せておけば申請は通るはずだから」
「……わかったガンバて!」
「うん!」
胸ポケットからカードを取り出して莉乃に渡す。
受け取ったのを確認したら紫青は走ってどこか行ってしまった。
莉乃はカードを持ちながら受付へと歩いて行く。
「あのーここにくれば入隊?入部?とにかく【八咫烏】の一員になれると聞いてきたんですけど」
莉乃はパソコンをいじっていた紫青と同じ烏の仮面をつけていた人にカウンター越しに話しかける。
「能力者の方ですか?」
「はいそのはずです。後これを渡せと言われてるんですが」
「それは!確認します」
そう言ってカードを受け取り機械に通したりなんやりしていたので待っていると不意に部屋が赤一色になった。
『緊急事態発生!基地の中に敵が侵入。至急職員は退避を能力者は各自配置につけ繰りす———』
スピーカーが破壊され天井が壊れ莉乃の目の前で仮面の人が瓦礫に押しつぶされて死んだ。
その時血が莉乃の頬に少しかかる。
「ギャッハハハまさかこんな簡単に入れるなんてな【八咫烏】も落ちたもんだぜギャッハハハ」
それと同時に銃火器を両手や腰や肩につけた女性と紫青が現れる。
紫青の方は肩などを銃で撃ち抜かれたのか手で抑えていた。
「せいちゃん!今助ける……ッ!!」
莉乃が紫青の元に行こうとするが女性が莉乃に向かって銃を乱射するせいで近づけない。
「邪魔はさせねーよ。コイツとは今アタシがバトッてるんだ。テメーはそこで大人しくしてな」
言い終わると女性は両手の銃を一斉に紫青めがけて打つ。
紫青は瞬間移動しているのか現れては消え現れては消えを繰り返し女性の背後をとりながら戦っている。
「だからそれは見飽きたんだよ!!!」
「グアッ!?」
女性が自身の背後に銃を打ったかと思うとそこに紫青が現れ銃に撃ち抜かれる。
それをみて流石に我慢出来なくなり助けに行こうとした時だった。
紫青の体がブレたと思ったら視界が周りの景色が突如変わっていた。
エレベーターの扉が閉じるなか莉乃に向かって紫青が手を振ってこう言った。
「君だけでも生きて」
状況を理解できず体が頭が動かない。
そして莉乃が固まったままエレベーターの扉が閉じ切った。
閉じた瞬間ようやく頭が追いつきはじめる。
エレベータの地面にへたり込む。
直感だがわかる紫青が死んだということが。
「悲しいよせいちゃん偽物とはいえ。死んじゃうなんて」
莉乃にとって紫青はこの世で唯一無二の大切な人だ。
それは異世界に急に勇者として召喚されてから魔王を倒し地球に帰ってきても変わらない。
だからこそ例え今の紫青が偽物であろうと死んでしまったのは悲しい。
莉乃は立ち上がり扉の前へ歩く。
そして拳を握り締め扉を思いっきり殴った。
パリンとガラスが砕けるような音がした。
莉乃の拳は扉以外の何かを砕いた。
そして霧が晴れるかのように意識がはっきり戻り現実へと戻った。
異世界帰還彼女 @kakukaki
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