ある日突如として現れた神々によって告げられた、世界の終わりと強大な魔法。
それに立ち向かう冒険者3人の物語です。
物語のかなり早い段階から「世界の終わり」という脅威に立ち向かうことになります。
一人称であるものの登場人物3人、それぞれの視点で、多角的に描かれる世界や戦闘には立体感があります。
独自の距離単位があったり、多種多様な魔法が飛び交ったり。人それぞれに独自性(パーソナリティ)と呼ばれるものがあるなど、世界観がしっかりと作り込まれている事が伺えます。それも上記にある物語の立体感を生んでいる1つの要因なのだと思います。
そんな異世界で語られるこの物語の魅力は、神に抗おうとする人の『心』あるいは『想い』でしょう。
戦闘力という数値があるのですが、主人公3人は強い部類(特に1人は戦闘力1位)です。なので彼らが中心となって神々と争うことになるわけですが、特徴的なのはエキストラ(モブ)に意味を持たせている点。
この手の作品の場合、「その他の人々」は居ないもの、居なくていいもの——空気である事が多い気がしますが、この作品では魔法を使う際に彼らが文字通り“生きる”。それでいてでしゃばりすぎることもなく、絶妙な塩梅でそこに“居る”。
そうした色を持った彼ら彼女らが想いを胸に積み重ねてきた努力こそが、どうやら今後の人類の行く末を占いそうです。
当然、滅ぼされようとする世界には主人公達以外にも多くの生きている人がいて、積み重ねてきたものがある。そんな彼らにも焦点を当てようとする作者さまの意図がきちんと伝わってきます。
それゆえに主人公達も彼らを蔑ろにすることはなく、人類全体があくまで人として、神がもたらそうとする「終わり」に抗おうとする姿がこの作品最大の魅力のように感じました。
個人的には、特に戦闘力1位の彼が気づきを得るところや、聖女が使う聖愛魔法の特性、地味に異世界の異世界がありそうな発言をしていたところなどにグッとくるものがあり、期待してしまいます。
冒頭の破滅的なシーンが示すものは過去なのか、未来なのか。人は努力や想いだけで神に抗うことができるのか…。
一方的で無機質な神々の選択に、主人公達を中心とした人々の想いで立ち向かう物語の行く末とは…?