第4話 お礼


「ッ!?ここは!?」


 お、やっと目が覚めたか。

 俺は、あれから30分ほどアイシャ?(メイドの人がそう呼んでいた気がしたから)が目覚めるのを待っていた。

 そして今、アイシャ(仮)はさっきまで倒れてたとは思えないほど元気よく飛び起きた。


「!そうだ火炎竜フャイアードラゴン!あれを倒さないと!!!」


 そして、瞬時に倒れる前の記憶を取り戻し、火炎竜を倒そうとしだした。


「火炎竜ならもう倒したぞ」


 俺がそう言うと、アイシャ(仮)は驚いてこちらを振り返った。


「あなたは誰?」

「俺は、レイ………」

「その方はレイ様です。アイシャ様が気絶している間に火炎竜を倒して私たちを救ってくれました」

「アンナ!無事だったの!?」

「はい、そこにいるレイ様が助けて下さいました」

「この人が火炎竜を倒したって言うのは本当なのね……」

「はい、神に誓って」

「元々疑ってないわ、ただ確認したかっただけ」


 そうは言っているが、アイシャ……さんの顔は納得がいってない顔だった。

 まぁ、別に手柄が欲しくて助けたわけじゃないから自分の手柄を疑われたって特に何も感じないが。


「それでは、レイさん。この度は助けていただいて本当にありがとうございます」

「敬語はやめてくれ、見た目から想像するにあなたは貴族のようだからな」

「そう?それじゃあ遠慮なく。あなたが火炎竜を倒してくれなかったら私たちは今頃死んでいたわ。だから、本当にありがとう」

「別に良いよ。俺も自分がどれくらい強くなったか知りたかったところもあるからな」

「それでもあなたが私たちを救ってくれた事実は変わらないわ。だから、お礼をしたいのだけど」

「お礼?別にそこまで気にしないで良いのにな……」

「いやいや、命の恩人にお礼も何もしないなんて公爵令嬢の名が落ちてしまうわ。だから、私を救うと思ってお礼をされてくれない?」


 へー、貴族だとは思ってたけど公爵令嬢だったのか……。ん?公爵?


「は!?公爵令嬢!?」

「えぇそうよ、もしかして知らなかったの?」

「知ってたらこんな馴れ馴れしい口調で話さねぇよ!」

「別に良いわよ。私、公爵令嬢だからとか、そう言うの嫌いだから」

「そういう問題なのか……?まぁ、アイシャ……さんがそう言うなら良いのか……」

「私のことは呼び捨てでいいわよ。あなたは命を救ってくれた恩人だもの」

「じゃあ、アイシャ。そう言うことならお礼は受け取らせてもらおうか」

「えぇ、そうしてちょうだい」


 そう言い、アイシャは笑った。

  

 レイは自分でもクサイと思いつつも、心の中でこの笑顔を守れて良かったと思うのだった。


  ——————————————————


「うお……でっか」


 俺はあのあと森を出て、アイシャが乗って来た馬車に乗って公爵家の屋敷まで来た。

 アイシャの本名は、アイシャ•オルリア。どっちも名前っぽいがオルリアは名字である。

 

 オルリア公爵家はこの帝都でも3つしかない公爵の位を持っている家で、三大貴族に数えられている。

 その中でもオルリア公爵家は武を重んじる家系で、ヴャイオレット家と対をなすほどだ。

 だが、オルリア家はヴャイオレット家のように戦い一筋ではなく、他にも政治や商売など色々なことをしている。

 

 そんなオルリア公爵家だが、分かってはいたがうちの屋敷とは比べ物にならないほどの大きさである。

 うちの屋敷もそこそこでかかったんだけどなぁ……。


「一応公爵家だもの、多少の威厳は見せつけなきゃいけないのよ」

「なるほどねぇ……」


 まぁ、王族の次に権威のある家だからな。そりゃあ平民に舐められることなんてあっちゃいけないもんな。


「それじゃあ、まずはお父様に挨拶に行きましょうか」

「え?お父様って公爵家当主のことだよな?」

「そうよ、まずは私の命を救ってくれたあなたのことを紹介しなきゃ」

「俺、敬語とかこの6年まともに使ってない」

「まぁ、そこは頑張って」

「はぁ〜」


 まさかこんなところであの社畜時代の記憶を掘り起こすことになるとは……。

 敬語なら、一切の粗相がないように完璧に習得したからなぁ……。


「それじゃあ、屋敷に入るわよ」


 そう言い、アイシャは扉を開いた。

 その瞬間……


「「「お帰りなさいませ、お嬢様」」」

「ただいま」


 うおっ!びっくりした。

 ほんとにこんな大人数の使用人に迎えられることってことあるのか……前世の漫画以外だと初めて見たな。


「お嬢様、こちらの男性は?」

「あぁ彼ね、話すと長くなるから先にお父様に説明しても良いかしら?」

「かしこまりました」


 そう言い、使用人たちは去っていった。


「それじゃあ、行きましょうか」

「あ、あぁ」


 今から会うのは公爵家当主。

 失礼のないようにしなきゃ、最悪殺されるかもしれない。

 あまり思い出したくないが、社畜時代に使っていたあの堅苦しい敬語を使うとするか。


「なぁアイシャ、お前のお父さんってどんな人なんだ?」

「うーん……なんと言うか親しみやすい貴族って感じ?」

「なんだそれ」

「まぁ、会ってみればわかるわよ」


 そう言い、アイシャは歩き続ける。

 しばらく歩くとある扉の前で止まり、その扉をノックした。


「お父様、アイシャ、ただ今帰宅しました」

「入りなさい」


 低く、威厳のある声だ。

 その声だけでもこの人が公爵家を背負っていると言うことがわかる。

 果たしてアイシャは親しみやすいの意味を知っているのだろうか。


「失礼します」


 そう言い、アイシャは扉を開く。俺もそれに続いた。


 扉を開いた先には、ガタイの良い強面の男性が腕を組んで座っていた。


「アイシャ、特訓はどうだった?なにか得られるものはあったか?」

「はい、この世には今の自分では到底及ばない強者がいることを改めて感じました」

「そうか、それは良いことだ。この世に絶対などない。これから自分が強くなっても慢心せず、努力を怠るなよ」

「はい、分かりました」

「それでアイシャよ」

「はい、なんですか?」

「えっと、その男は誰なんだ?」

「あぁ、彼ですか。彼は私を火炎竜ファイヤードラゴンを倒し助けてくれた命の恩人です」

「は?火炎竜?そ、その話は本当なのか?」

「はい、本当です」

「…………………」

「お父様?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ、状況を整理したいんだ」

「分かりました」


 そう言い、アイシャのお父さんは顔を伏せてしまった。

 

 まぁ、そんなほいほい世界最強種倒しましたなんて言われても簡単には信じられないよな。

 俺も同じ立場だったらそう思う。


 それからしばらくの間俺は、アイシャのお父さんが復活するのを待ち続けるのだった。


 

 

 

 




 


 

 

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異世界に転生した俺は、神から授かった外れスキル『七無双』で文字どうり学園を無双する たかみそくん @takamisokun

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