第2話

「何かを守るヒーローになりたい。」


そう願う人はどれほど居るのだろう?



それは記憶を無くした僕が唯一、覚えている出来事。


僕は、テレビという名の光る板の中に映るという者に憧れを抱いていた。


ヒーローはどこに居ても駆けつけて、大切なモノを守る為に闘っていた。時に孤独に、時に仲間と共に。それは僕にとって、宝物とも言うべき大切な記憶だった。僕は何度も挫けそうになっても必ず立ち上がり、いつでも未来を見据える『強いヒーローになりたい。』何時しか、そう思うようになっていた。




僕は臆病だった。お父さんにも、お母さんにも似ていない、その臆病な性格から友達にも笑われて悔しかった。


だから


ある時、僕は聞いたのだ。今では顔さえ思い出すことすら叶わない、お父さんとお母さんに。


「お父さんとお母さんは僕がになったら、嬉しい?」


それを聞いたお父さんは顔を緩ませながら


「ああ!嬉しいぞ!きっと強くて、かっこいいヒーローになるんだろうな!」


と言い、お母さんは


「そうよ。きっと貴方なら大切な《何か》を守れるヒーローになるわよ。」と言った。


それから僕の夢は、ただの「強いヒーローになること」から大切な「《何か》を守れるヒーローになること」になった。



僕のはただ強いだけじゃなかった。独りで逆境の中でも闘うことができて、その経験から成長することもできる。


僕は考えた。


「僕が本物の『ヒーロー』になる為には、『僕』が皆んなから否定されて、『僕』が『僕』だと認識されない世界。そんな世界で、必要とされなかった『僕』が必要とされることができれば、偽物の『僕』は本物の『僕』になれるんだ!」と。



当時の僕は本気でそう思っていた。



「僕が『僕』になれる世界にもし、行けるのならば僕はどんな事をするだろうか?」


そんな風に考えて妄想する事が、僕の日常になっていった。



お父さんとお母さんはそんな僕を優しく見守っていた。そこにあったのは、1つの家族としての形だった。


それでも僕は、その中に居ることの本当の幸せには気づけなかった。



『僕をこの世界とは違う、この世界とは関係のない世界へ。僕を僕だと認識しない世界へ連れて行って。』



純粋な気持ちで、見知らぬ誰かに願ってしまう程には。

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