第15話 カームエルクとギルド職員
今日も河原の周辺で採取をし、石を高くしたその上で肉を焼いているとフォレストウルフが来たため、いつもどおり、闇魔法で倒しました。
カームエルクはいつもと違い、今日は僕が倒したフォレストウルフを2体、背中に乗せました。
「2体も持って行くなんて、邪魔できないのが悔しい!」
すると、カームエルクは石の上から覗き込んでいる僕の方を向くと、石に対し、角を擦り始め、ゴリゴリと音を出し始めました。
「何をする気なんだ?石を壊す気か?壊されたらまずい!」
壊される前に、森の木の上に飛び移れるように、石をどの木に伸ばすかを考えているとゴトって音がしました。
音がしなくなったので恐る恐る下を覗き込むとカームエルクが、向こう岸に渡っている姿が見えました。
「何をしていたんだ?」
よく見ると、石のそばにカームエルクの角が落ちているのが見えました。
急いで降りて確認してみると、角はホーンラビットの角と同じ長さでした。
「フォレストウルフのお返しなのか?」
今まで何度もフォレストウルフを持って行ったお返しなのかもしれないため、ありがたくもらうことにしました。
採取を終え、ギルドに戻るとエリカさんがいないことを思い出しました。
「カームエルクの角はどうしようか。」
エリカさんが言っていたことを思い出すと、カームエルクの角を出すべきか迷いました。
僕みたいな小さな子がお金をたくさん持っていることがバレると、悪い人に襲われる可能性があるため、個室で角出すべきだと教えてもらいました。
しかし、今はエリカさんがいないため、誰に個室に案内してもらい、角の報酬をもらうべきかわかりません。
カームエルクの角は薬にもポーションにも重宝されるため、高価です。少なくとも、いつも通り、受付で提出するのは危ないことはわかります。
「エリカさん、どうしよう。」
エリカさんに相談したくても、今はいないためどうしようもありません。"蒼雷の剣"のみんなもいません。
どうすればいいか悩んでいると受付の人に声をかけられました。
「どうしたの?トーン君?」
「あっ、えっと、薬草とヒール草、魔石の報酬をお願いします。」
「わかったわ。はい、報酬の銅貨10枚ね。何か悩んでいるようだけど何か変わったことでもあった?」
「あっ、いえ、何もありませんでした。いつも通りでした。解体所に行くので失礼します。」
咄嗟に誤魔化してしまい、ギルドを急いで出ました。解体所でフォレストウルフの皮と肉、牙を渡して報酬を受け取り、食堂で夕食を食べると急いで部屋に戻りました。
「はぁ、カームエルクの角はどうしよう。」
エリカさんに相談できないため、誰に個室に案内してもらって渡すのがいいかわかりません。
「エリカさん。僕はどうしたらいいのかな?わからないよ。」
どうしたらいいのかわからないまま、今日は寝てしまいました。
「はぁ。トーン君は大丈夫かしら?」
「あら?トーン君がどうかしたの?」
「アービさん。ギルマスったら酷いのよ。トーン君はまだ私とあなた達しか頼れる人がいないのに、私までダンジョンの調査に同行させるんだから!」
「頼れそうな人は紹介しておかなかったの?」
「紹介したかったけど、トーン君の固有を秘密にするなら、相手は慎重に選ばないとダメでしょ。まだ決めかねていたのよ。」
「それでも、出発する前には誰か紹介しておくべきだったんじゃないの?」
「私はまだ1年目なのよ?先輩しかいないし、誰が信頼できるかなんてわかるわけないでしょ!頼む人を間違えたらトーン君が怖い思いをするかもしれないのよ!」
「そうかもしれないけどさ、なら誰を紹介したらいいか私たちに頼めばよかったじゃない。エリカよりも長くこの街のギルドと関わっているんだからさ。」
「あっ!そうよね、あなた達は私よりもギルド職員との関係が長いのよね。相談すべきだったわ!私のバカ!」
「それでどうする?」
「戻れるのは確か5日後だったよね?戻ったら急いでトーン君に紹介したいから教えてもらえないかしら?信頼できるギルド職員が誰か?」
「いいわよ。ブラウと相談しておくわ。」
「ありがとう。本当に助かるわ。」
「トーン君のことで心配になることがあったらすぐに私たちに相談しなさいよ?」
「本当にありがとう。頼りにさせてもらうわ。」
「ギルマスには何か言われてなかったの?トーン君について?」
「残念だけどギルマスはトーン君と関わる気はないわ…。あっ!」
「何か言ってたのね?」
「そういえば、先輩にも頼った方がいいって言われたわ。」
「言われてたのね。」
「でも、信頼できる先輩を選ぶなんて私にはまだ無理よ。1年目なんだから!」
「もっと先輩達と交流しなさいってことよ。これからは気をつけなさい。」
「気をつけます。」
「それじゃ、ブラウと相談してくるわ。」
石喰い @hinouzi4
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