第2話 再会

今日は7月23日、この日の仕事は林間学校の4台口だ。風間は点検を終えて先輩達とルートを話し合っていた。

「風間、峠ちゃんと走れるかー?」

「たぶん、いけます。」

「曲がれんかったらすぐ無線で言いや、誘導したるから。」

「高さん、ありがとうございます!」

初めての泊まり仕事で緊張していたが、高島先輩の優しさに助けられた。

風間はいつも通りに車を走らせ、小学校近くの路肩に停車した。

「おはよう!すげえ!バスの運転席やー」

元気な小学生が乗ってきた。

挨拶を終えて小学生のレクリエーションが始まった。

「ビンゴ大会しまーす!」

「カラオケする!」

小学生ええなー、なんて思いながら走っていると西紀SAについた。トイレ休憩だ。運転手はただ休憩するだけではない。お客さんが安全に渡れるように誘導する仕事がある。車を止めてすぐにドアを開け道路の脇に立って案内した。

途中からは学校の先生が誘導してくれるそうなので、風間はベンチに座って緑茶を飲んだ。たこ焼き美味しそうやなぁなんて思っていると、高島先輩がやってきた。

「お買い物完了や!このおかき一個あげよかー?」

ほんまに優しくて面白い人や。

「ありがとうございます。いただきます!」

次からSAではちょっとお買い物しようと思った。

「風間、出発の前にホイールとかの点検、忘れんなよ。」

「はい!ありがとうございます!」

もう少しで山道に入る。少し緊張してきた。

「うわー!川めっちゃ綺麗!」

「ほんまやすごいねー。」

「カントリーエレベーターや!初めて生でみた!」

初めて田舎の景色を見る子も居るんだろうか、子供たちのテンションが上がってきた。

風間は練習の経験を活かして無事宿舎まで山道を走り終えた。駐車場にバスを置き点検を終えた風間は隣の他社のバスに見覚えのある顔を見つけた。先月天王寺で見たあいつや!竹村や!

風間は話しかけてみることにした。

「すいませーん。」

「おぉー!!風間やんな?」

言わなくてもお互いわかった。

「風間久しぶりやなぁ。中学以来か?」

「せやなー。まさかバスの運転手やってるとは思わんかったわ。」

「ほんまやでー。先輩に挨拶してくるから、そのあと一緒に飯食おか!」

「俺もそうするわ!ほなあとで!」

風間は先輩方に挨拶しに行った。

「お疲れ様でした!おかげさまで無事に来れました。」

「風間、運転上手なったやんか。」

ちょっと厳しい橋本先輩に褒めてもらえてこの上なく嬉しかった。

「ほな、今日は終わりです!明日は何もないけど一応急に走らなあかんかもしれんから酒飲まんと待機やで!お疲れ様でした。」

「ありがとうございました!」

高島先輩の言う通り、お酒は今日から控えておこう。

「竹村!」

「おう!何食べる?」

宿舎にある冬はスキー客で賑わう食堂で早めに夕食を食うことにした。

竹村「小学生んとき、こんな感じの食堂で牛丼食べたなー。」

風間「そうやったな!2人揃って牛丼にしよか!」

長い椅子の端で牛丼を食べながら、2人は昔話に花を咲かせた。

連絡先を交換し、部屋に戻ると死んだように眠った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

現実的すぎるバス運転手の物語 きっしゃん @nishigamgram

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ