第一部終章 東亰開封府 高俅邸
(あんなやつらがのうのうと気楽に生きていると思うだけで虫唾が走るわ。いまいましい梁山泊の残党どもめ。絶対に許さん)
国都、
梁山泊軍の活躍により方臘の反乱が治まり、功を立てた梁山泊の武将たちが
そもそも各地の豪族の反乱に、梁山泊軍をぶつけるよう進言し、密かに共倒れを狙ったのは自分たちである。結果反乱は収まったし、憎っくき梁山泊の主立った武将も40人弱にまで減らすことができた。だが、序列第一位の
そういえばかつて自分を相撲で投げ飛ばした、
梁山泊の首脳陣が生きている以上、いつまた自分たちに牙をむくか知れたものではない。また「
特に「
(何が「天に替わって道を行う」だ! 天とは俺たち朝廷のことだ、俺たちが行ってきたことこそが道なのだ! )
ここに至って、高俅は元梁山泊首脳陣を葬り去る計画に着手した。都合のよいことに、首領の宋江は
聞けばこれまでに何度も騙され、裏切られてきているのに、「天子にご迷惑がかかる」とあらばそれを避け、「天子がお困りだ」とあらば命の危険も顧みず、他の賊の討伐に出向くという、何とも間抜けな男である。
急激に国力を伸ばし、自分たちを虐げてきた遼国を滅ぼして勢いを増す金国が、宋国への侵攻を始めんとするこの緊急時に、この高俅という執念深い男の頭の中はふたつの復讐でいっぱいになっていた。
ひとつ、
もうひとつは、自分に恥をかかせた燕青という小男を亡きものにすること。
「お召しによって参上仕りました。
「許す、入れ」
扉を開け入ってきたのは、黒い文官の服を着た、不思議な人物であった。
服装、派手でもなく地味でもなく。体型、中肉中背、高くもなく低くもなく。声音大きくも小さくも、高くも低くもなく。とにかくどれをとっても特徴がない。特に顔は、目立って整っても醜くもない、そしていざ思い出そうとすると、もやがかかったように思い出せないのである。
「その後、忌々しい燕青めの行方は知れたか? 」
「いまのところ所在は不明ですが、
「うむ、可能ならば生け捕りにして引っ立ててこい。わしが直々に殺してやる。だが無理ならば生死は問わぬ。まかせたぞ」
「御意」
こうして、宋国の
(第二部に続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます