第二章 二仙山紫虚観 (一)
「さて、と……あやつがいなくなったところで」
と羅真人は向き直り、
「連れてきておいてなんだが、おぬしのことを
「どういうことですか?」
「ふむ。小融の姓は
「ええ、わかります。」
「そこでじゃ……祝姓で思い出す三兄弟がおるじゃろ 」
「……祝家荘の! では小融は」
「さよう、祝家荘の四番目の子供なのじゃよ」
そうか、最初に名前を聞いた時に感じた違和感は、これだったのか!
小乙は比較的他の仲間から遅れて「星持ち」の仲間に入った。
なので話は先輩から又聞きだが、「星持ち」の仲間と祝家荘の戦いは、それは激しかったそうだ。だが祝家に四人目の子がいたとは初耳であった。
「おぬし、小融の眼をみたじゃろ?」
「はい」
「あの子は、生まれてすぐにあの『
中国において「
「
「そうでしたか、あんなに明るく元気に見えるけど、なかなか大変だったんですね」
「うむ、わしのところには女道士もいるから、面倒を見てくれたのじゃが、やはり本当の家族ではないから、寂しかったじゃろうな……さて、そこで、じゃ」
「はい?」
「おぬしは小融の
そうか! 祝家村を滅ぼしたのは
「それをご存じなら、なぜわたしを一緒に連れてきたんです? わざわざ小融に嫌な思いをさせる必要もないし、仇と知られてあの飛礫を食らわされたくもないし?」
「いや、もしもおぬしが、うちの
「たのみ?」
と、小乙が聞いたその時である。
「それでしたら大丈夫ですよ、真人様」
別の男の声がした。
振り返ると、やはり白い道服を着、
「『
「その『
「……はぃ 」
小乙は壮烈な仲間の死に様を思い出し、目頭が熱くなった。
一清は
「
と苦笑する。
「おぬし、それは間違いないかな?」
「はい、祝家荘のことは、話で聞いただけです。まだその頃は、
「ならばよし、では小融を呼んで話してみようかの、ほっほっほっ」
三人は羅真人の部屋に入り、椅子に腰掛けたところに、
「来たかの小融、ちょっとそこへ座りなさい 」
「ご用はなんでしょうか師父、あら? 一清
「うむ、小融よ、わしからあらためて紹介したい。今日お前を助けてくれたこの男なのだがな」
「はい」
四娘は小乙に、殊勝にも袖を合わせ頭を下げて挨拶をする。
「入雲龍」公孫勝こと一清道人が続けた。
「落ち着いて聞けよ。実はこの男、昔わしと同じく
「えっ!」
さっと頭を上げ、椅子から立ち上がった四娘、どこに潜めておいたものか、両袖を掲げた時にはすでに両手に
「待て待て待て! 」と一清が慌てて制止した。投げる寸前で四娘は動きを止めたのを確認して一清が続ける。
「
聞いて四娘は何度か深呼吸をし、両手を下ろしてから顔色が戻ってきてから「
「ああ、別に責任逃れするつもりはないが、俺はまだその頃は
「そう……だったらしかたがないわね。それにさっき助けてもらった恩義もあるし……ん、いいよ、忘れる」
「そうか、そうしてくれると有難い。さっきみたいに石やら
冗談をいい、にこりと笑いかけてきた小乙の、とろけるような笑顔を見て、四娘はどきっとした。
(やだ、ばたばたしていてよく見てなかったけど、落ち着いて見たらカッコイイじゃないの……)
一清道人が「では、正式に紹介し……お前なに赤くなってるんだ?」
「ち、違うわよこれは、ちょ、ちょっと暑いだけだから! 違うから!」
「(何が違うんだ?)うほん、
芝居がかった紹介をした後、一清道人こと「入雲龍」公孫勝は、見栄まで切ってみせたものである。それを聞いた四娘、なぜかさらにどきどきする。
ええっ!
時を遡ること宋朝第四代皇帝、仁宗の
悪疫が大流行し、天下に不安が広まったことに心を痛めた仁宗は、時の禁軍大尉(大将軍)である
ところがその洪大尉、酒に酔った勢いで
その散らばった魔星の宿命を負った百八人の好漢が、八代皇帝
「
また前述の「
「ほっほっほっ、では
「はい、では改めて
礼を述べて、
「すまぬが燕青よ、わしが
羅真人も興味深そうに茶を啜りながら耳を傾けている。
そもそも梁山泊軍は、何度となく鎮圧を図る宋軍と戦い、これを下してきた。だが梁山泊の頭目、第一位の
そこで
その裏工作の場面では、まさにこの
その際、李師々太夫に惚れられ色目を使われるという一幕もあったのだが。
結果梁山泊軍は、宋国を悩ませる
だが次の
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