第27話 復讐の始まり?

 十二月一日、秘書が自殺し一旦は決着をみたと思われていた贈収賄事件が再燃し、その渦中にいる柴田翔財務副大臣が議員会館前で車に乗ろうとしているところを狙撃される。

銃創は額から入り後頭部へ抜けていて即死だった。

秘書やボディーガードなど六名が柴田を囲っていて、その周りを二十名ほどの報道関係者が取り囲んでいた。

道路上には歩行者や車両はなく、そばにいた人間の中に犯人がいるものと考えられた。

警察が間を空けず全員の持ち物を検査、身体検査もし、袖口等の硝煙反応検査もした。

しかし、犯人は見つからなかった。

各報道機関は一斉に事件を大きく取り上げた。

早くも「テロか?」と騒ぐところもあった。

最近、死亡議員の秘書が逮捕されたり、息子の詐欺事件への関りも噂されている。議員に対する管理責任とが道義的責任とかも問われているなか、突然の暗殺だった。

 犯行については目撃者もなく凶器すら特定されていない、警察は解剖中としか発表していなかった。

そんな風にテレビで報じられている。

 

 ニュースを見ながら一心は、佐田博士のチームのことを心配した。

五人が五人全員柴田翔か息子の健治に関りが有るし、子供を殺された親もいる。

まさかとは思うが、……

 気になって佐田博士に電話を入れてみる。

雑談をしてその中から暗殺に関係しているのかどうなのかを探ろうとしての事だった。

博士は、

「メンバー全員が柴田議員に相当の恨みはあるが、暗殺なんかとても出来ませんよ。

まぁ、一助さんが白老で操縦した<かぶと虫>は渋谷に五機あって飛行は可能な状態ではありますから、やろうと思えばできる環境にはありますよ。

だけれども、渋谷から議員会館まで直線で五キロほどですが、高層ビルの間を飛行するのは難しいし、現場近くに行ってたなら警察の網にかかっていたはずでしょう」

そんな風に言う。

一心には暗殺を実行したのか、そうではないのか分からなかった。

 ――まぁ正直にいうはずないか。……

ただ、博士が言った通り、白老での強盗被害で十五機の<かぶと虫>と関係機器が盗まれている。

相応の知識がいると言いながら、恐らくそういう知識のある人は数えきれないくらいいるだろう。

そいつらが実行犯かもしれないが、強盗犯のその後の情報はまったく無い。

 

 

 万十川警部は朝八時から警視庁に出勤して、ある大物政治家が任意で事情聴取のために来ることになっているので捜査課で待っていた。玄関には警部と刑事に出迎えをするよう指示していた。

来庁は九時の約束だったが、その前に緊急通報が入った。

待っている柴田翔財務副大臣が暗殺されたと言うのだ。

万十川は訳が分からず、取り敢えず現場へ急行した。

大勢の人だかりができていて先行して来ていた刑事から状況報告を受け唖然とするしかなかった。

現場での指示を終え捜査課に戻った万十川は留市龍生殺害事件の実行犯として白石拓磨を、その教唆の罪で死亡しているが柴田翔を起訴するよう指示した。

 

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