ろ
まり
第1話 みちこの話
俺んとこにこい。
遠いむかしあの人はみちこにそういってくれた。
今、みちこは毎月の生活費を亭主に貰いに行くため自転車で走っている。今月もくれるだろうか。ワシも大変なんやと減らされるんだろう。
そんなことを考えながら、
女はいくつになっても
そんな星の王子さまがやってくるのを
待っている。
心のなかでは、記憶に残るむかしであった人のことを思い出す。
今でも覚えているかな。
そしてあの人の元に行ってたら
幸せになったろうか。
もし、があったらみちこは幸せに
なっていたろうか。
初めて言われた言葉に顔を赤らめたみちこ
20才の時、挫折して
大学中退して働きながらの看護学校へ。
仕事していた職場。その時であったひと回り年上の男。
ナースコールが一斉になってるのを知らずに入院患者さんの事を話していた看護婦詰所のナースたち。
私は心に思っていたあのひげ面の薫を
思い出して密林探検隊の隊長みたい。と
しゃべってしまっていた。
彼は椎間板ヘルニアと診断されて入院中のトラックの運転手だった。
しばらくして彼は奥さんと離婚した。
奥さんは怖い人で何かあると箒をもって
追いかけてくると半ば楽しんでるのかと
思うほど、楽しく話した。
もし、みちこがバツイチの人と結婚したいと言ったらきっと親は認めてくれなかったろう。彼との結婚はあきらめた。
優しくて幸せにしてくれる人だとは
思った。
湯の山ロープーウェイ。
中河原駅で偶然にも出会った。
今からどこへいくんや?
雪駄に作業ズボンの出で立ちで薫は
駅で友だちと二人でいた。
四日市の駅で友だちと別れて
今から
湯の山温泉のロープーウェイでも乗りにいこうか今日もひげ面の探検隊隊長は
反対向きに湯の山にでも行こうかと
みちこを誘った。
ぼくとつで優しい瞳。
奥さんとは別れた。
別れてから見合いで奥さんは子持ちの男のもとに行った。と彼は話した。
みちこはそれを思い出していた。
今、薫はいくつになっただろう。
介護保険のお世話になっているのかも
しれない。そう思うと夢見る世界から
現実に引き戻された。
今は桜の駅近くに住んでるようである。
あの人に会えるまで。
また、縁があれば、いつかは逢えるのだろうか。
ろ まり @mie-saiki1216nakagawara
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