受験生らしいんですけど
「あんさん、今日の進路説明会どこ見に行ったー?」
いつも通り、4時の美術室に元気な声が響く。紛れもない、莉月だ。それと、今日は男子たちの姿が見られない。
進路説明会とはその名の通り、保護者と生徒で市内の各高校が3回ほどに分けて独自の強みや、受験生として何をしておくべきかなどを説明してくれる場である。この日は5、6時間目がそれに当てられた。
「…………南見て、東。あと私立だと星雲高校見てきた」
それより1オクターブ低い少女の声が莉月の後ろから聞こえる。
「お前には聞いてない」
「何でよッ!!あんさんて言っただろ!」
―――そう、実はもう莉月達は受験生なのである。
※※※
「どこの高校行くのあんさんは」
「………東。」
「ああ、アートコース?」
東高等学校。公立の学校で、莉月の言ったとおりアートコースが市内で唯一ある高校である。暗優は黙ったまま頷き、絵を書き進めていた。
「皆はー?」
「私は北かなぁ~」
「俺はまだ決まってない。」
因みに、この市内で頭の良い順だと南→東→北→西=星雲高校(私立)といった具合である。
「ほまたそは?」
「私も東かなー!お姉ちゃん居るし!」
「美稀ちゃんのお姉さん、すごく絵がうまいよねぇ~!」
美稀の現在高校二年生の姉も絵が好きで、よく表彰されたというような話をみたり聞いたりする。
「………とは言え、受験とかまだわかんねぇよぉー!」
「「「激しく同意」」」
暗優の発言に莉月以外の全員が口を揃えた。しかし、莉月だけは皆に目もくれず絵を描く準備をしていた。
「皆、勉強しようぜ☆……って!!痛い痛い!!推し匠!シャープペンやめて!!」
―――莉月がとびきりの笑顔で言うと、その瞬間多方面から手や足筆記用具が飛んできたのであった。まだまだ、延び白のある美術部総員である。
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美術部総員、奮闘記。 風邪 @Kaze0223
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