第4話 罪悪感

「かなり怒られたようやな」

「生徒連れてあんな場所で泳いだんやから、校長は許してくれんで」

「不祥事もええとこやな。けど、あんまり薬になってないようやなあ」

 もはや、隆と洋一、修司にとっては対岸の火事だった。


「だけど、手あげたやつらは、先生のことやワシらのことを黙っていてくれたなあ」

 洋一にはあっぱれと思われた。

「あの先生やって、ワシらのことバラしとったら、ワシら校長室に呼ばれとったで」

 修司の言うように、まんざら悪い教員でもなかったのだ。

「おっちゃんに相談してみようか。いくらなんでも、ワシらだけおとがめないのは後味が悪いなあ」

 隆の一言で決まった。夜、修司の家に集まることになった。


 勲叔父さんは話を聞いて

「ええ心がけや」

 と誉めてくれた。

「ワシが校長に匿名で手紙出しちゃる。足の悪い子が川で助けられたことにしょうか」

 修司は小学6年の時のケガがもとで、足を引きずって歩くようになっていた。

「さすが、おっちゃんや」

 隆と洋一は改めて感心した。


 男性教師は再び、校長室に呼ばれた。

 教師の心配をよそに、校長は笑顔で迎えた。

 話を聞いた教師は

「それはボクじゃないです」

 人違いである旨を告げた。

「先生。千足村の子供たちをかばいたい気持ちはよく分かります。そんなことより、夏休みに先生が巡回していて、子供を事故から救ったことが大事なんです」


 校長は職員会議で、この美談を紹介した。もちろん、校長なりの誇張が加わってはいた。

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続 村の少年探偵・隆 その7 美談 山谷麻也 @mk1624

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