第3話 被害者

 夏休みの登校日。校長は全校生徒を集めて訓示した。

「水泳禁止区域で泳いだ者は手を挙げなさい」

 何人かが手を挙げた。千足村の子供ではなかった。


 こうして、その夏は千足村に被害者が出ることなく過ぎて行った。

 2学期が始まった。隆は男性教師に呼び止められた。

「隆。お前ら、水泳禁止区域で泳いだのに、なんで手あげんかったんや。ワシらだけ校長に怒られたやないか」


 なんと、その教員は生徒数人と泳ぎにきていたのだった。

「ずるいやっちゃ」

 教師はすごんできた。


「あいつらにはワシの名前は出すな、絶対しゃべるなって言うておいたのに」

 教師は反省していなかった。

「先生。それはないでしょう。先生の名前なんか出したら、どんな目に遭うか分からんのですから」

「まあ、そりゃそうや」

 後、考えられるのは保護者からの通報しかなかった。だとすれば、校長も、もみ消すわけには行かなかったのだ。

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