6.おいでよ同人誌の沼

 書籍化されないなら、自分で作ればいいじゃない。


 そう、私たちは自分で本を作ることができる。出版社を介さず、自分で使ったそれを、同人誌という。いわゆる薄い本だ。もっとも、やろうと思えば分厚い本も作ることができるので、一概に薄い本とは言えないが。

 薄い本と言えば二次創作のイメージがあるが、自分で作った本は同人誌である。


 同人誌を作る一般的な方法は、印刷所に依頼することだろうか。

 原稿をレイアウトして印刷データにし、表紙や目次や奥付けを作る。紙を選んだり、遊び紙を付けたり、キラキラの箔押し印刷にしたりと、こだわりを詰め込んだ本を作ることができる。自分の書いた作品が紙の本になり、印刷所から届いた瞬間は、何とも言えず感慨深い。


 それらの作業はハードルが高いと思われるかもしれないが、自宅のプリンタでも、コンビニのコピー機でも、簡単に作ることができる。短編小説をプリントアウトした紙一枚でも、半分に折ればそれはもう本である。同人誌はそれくらい自由だ。

 某イラスト投稿サイトでは、小説をアップロードするだけで、自動的に本が作れるサービスもある。便利な時代だ。

 

 自分用に、記念として作るのもありだが、世界には同人誌即売会というものがある。


 最も有名な同人誌即売会と言えば、毎年お盆と年末の頃に、柱の上に逆さにした四角錐を乗せたような建物で開かれるオタクの祭典だろうか。あれも二次創作が中心のイメージがあるが、もちろんオリジナル作品だって出ることができる。

 他にも一次創作オンリーのイベントや、小規模なイベントもあちこちで開かれているので、興味のある人は調べてみてほしい。


 出展料はかかるし、本の印刷代や交通費、ディスプレイ用品なども揃える必要があり、言うなれば金のかかる趣味だが、出てみると楽しい。もちろん、一冊も売れずに在庫を抱えてすごすごと帰る覚悟も必要だが。


 リアルイベントで本を手に取ってもらえるのは、webサイトで読んでもらえるのとはまた違った感動がある。知り合いでもない、たまたま通りかかって目に留めてくれた人が、お金を払って買ってくれるのだ。継続してイベントに出ていると、「前回買って良かったから、また買いに来た」という人も時々現れる。こうなったらもう、嬉しすぎる。

 こういった出会いがあるのが、リアルイベントの醍醐味だろう。書き続ける原動力にもなるし、良い本を作ろうと思える。


 webサイトに作品を載せて、日々PVの推移を眺めていると、画面の向こうに人がいるということを忘れてしまうこともあるだろう。だが、一人でも読んでくれた人がいるということを、忘れないようにしたいと思うのだった。


  


 

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へっぽこ物書きの雑記帳 月代零 @ReiTsukishiro

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