感謝の気持ちを

最終話 未来

それからあっという間の月日が経過した。

俺と愛花は結婚した。

そして...第一子となる女児が産まれた。

名前を優花(ゆうか)という。


俺は斗真、奈央、シウ、シノンと飲んでいた。

全員と...居酒屋で。

何でやねんという話だが。

この居酒屋はお気に入りだ。


「しかしおめでたいよな。お前に娘か」

「ああ。愛しいぞ」

「喧しいわ。...だけどまあおめでたいな」

「...お前はどうするんだ?婚約は」

「婚約か?...まあマリンがいきなりハーバード行きたいって言い出したのはすげぇビビったんで...まだ先の話だろうな」

「頭...良いですね」

「あー。まあ根性だけはあるから」


「猪突猛進だからなぁ」と斗真はうんうんと頷きながら焼酎を割って飲んでいる。

しかしもう4杯目なんだがよく酔っぱらわないなコイツ。

そう思いながらシノンを見る。

シノンは「何」と言いながら俺を見てくる。

俺は「うんや」と肩を竦めた。


「お前何も言わないのな」

「私が喋ってどうにかなるの?」

「その性格も変わって無いな」

「変わらないから大丈夫。...だけど私は私だから」


シノンはそう言いながら柔和になりながら俺を見る。

俺はその言葉に「そうか」と返事をした。

それから笑みを浮かべる。

するとシウが「...お姉ちゃんは最近、筋トレを始めました」と暴露する。

俺達は噴き出した。


「何!!!!?」

「ちょ!シウ!」


筋トレって何だよ!!!!!

思いながら居るとシウがシノンの腹を摘まむ。

それから「バキバキですよ。腹筋」と真顔で答える。

そしてシウは「私が教えた方法で鍛えています」と暴露しまくった。

それに対して珍しくシノンが慌てる。


「シウ!」

「...はい。お姉ちゃん。もう言いません」

「お前が筋トレって。凄いな」

「足が不自由だからその分...鍛え始めた」

「ああ成程...しかしそれで腹がバキバキになるまで鍛える必要あるか?」

「良いでしょう。何でも」

「いやまあお前の自由なんだけど。お前の身体だし」


しかし疑問だ。

何故そこまでバキバキにしているのか。

そう考えながらも聞かない事にした。

すると奈央が「でも...みんな凄い。目標があるだけ」と笑みを浮かべる。


「...お前には目標は無いのか」

「あるけど...先生になる夢が」

「ああ。そうだったな。お前今...大学生だったな」

「教員になりたかったから」

「...お前らしいよ。子供好きだしな」

「そうだねぇ」


奈央は小学校の教師になる夢を持っている。

その為に必死に勉強して今は大学に通っている。

20代後半を過ぎたが彼女は努力をしているのだ。

しかし早いものだな。

俺達が20代を超えるのも...だ。


「結婚して...4年目か」

「年取るのも早いもんだな。俺ら」

「じゃなくて世界が周るのが早すぎるんだ」

「...そうか。それも確かにな。成人式も昔に感じられるしな」

「本当に早いよな。時間経つの」

「...色々あったな」


斗真はあれからお兄さんと一緒に自らの父親から離れている。

佐藤一族については全てが離散した。

そして全ての関連事項が終了した。

親族の離散などもあった。

その中で佐藤愛花の母親は...その。

借金取りに追われる日々になっているそうだ。


「...愛花ちゃんが決めたのは凄いな」

「彼方さんも弁護士さんも協力してくれた。これで良かったと思う」

「...そうね」


そして俺達は他愛無い話をする。

俺はその中でシノン達を見る。

(そういえば)と思った事があったから。

シウに聞く。


「お前らは今は何をしているんだ?」

「私はソーシャルワーカー。そしてシウは保育士」

「そうなっています。同居しています」

「...ああ。結局、ソーシャルワーカーになったんだな。限りなく嫌々なったって言ってたけど」

「嫌々なのは事実。...だけど私は手に職をつけたかった」

「...偉いな」

「私を褒めても何も出ない」


シノンはそう言いながらビールを飲む。

するとシウがまたシノンの腹を摘まんだ。

それから「お姉ちゃん。太るよ」と言った。

失礼な事を言う。


「アンタは自重ってものが無いの」

「無い。...事実だから」


その姿に苦笑いを浮かべているとあやしていた愛花が戻って来た。

それからみんなに「お待たせ」と言う。

美人になった愛花。

正直ここまで美人になるとはな。


「愛花ちゃん。優花ちゃんは大丈夫?」

「うん。大丈夫だよ。ここの店長さんに色々と場所とか貸してもらっているから」

「そっか」

「で。何の話をしていたの?春樹」

「ああ。お前の話とかみんなの近況だ」

「そっか」


そして俺を見る愛花。

俺の横に腰掛けてから店員さんにソフトドリンクを注文した。

その姿に俺は愛花を見る。

「すまないな」と言いながらだ。


「うん。大丈夫だよ。...春樹はいつも優花の面倒を見ているからたまにはね」

「まあとは言ってもな。...何だか心配だ」

「大丈夫。元気出始めたしね」


愛花はそう言いながらマッスルポーズをする。

俺はそんな姿に苦笑いを浮かべながらみんなを見る。

みんなは苦笑しながら酒をまた飲み始める。

本当に...みんなも頑張っている。


ああそうだった。

言い忘れたが俺は今は研修医だ。

だから...頑張って精神科の医者になろうと思っている。


それはお金が、給料が高いから、じゃない。

愛する人を、周りの人を守りたい。

そういう意味でその職業を選択したのだ。


有難うみんな。


そう思いながら俺達は幸せに包まれて寄り添っていた。


fin

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彼女が寝取られたので女性を嫌いになったのですが... アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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