第57話 散骨
☆横田春樹(よこたはるき)サイド☆
佐藤愛花の父親が亡くなってから俺達はお通夜や火葬をした。
生前の意思に沿って遺骨は海に散骨された。
結論から言って出席者には見知った顔が居たがその中でも珍しいと思ったのが須崎シノンと須崎シウの再会だったろう。
須崎シノンとシウは顔を見合わせ互いに話をしてから一先ずは和解した。
そして俺と愛花は...様々な事がありながらも高校の卒業の時期を迎えた。
奈央もそうだが。
みんな巣立っていく時に達した。
俺はその中で過ぎ去る時間を感じながら外を見ていた。
「春樹」
「ああ。愛花。どうした」
「その。...ずっと外を見ていたけど大丈夫?」
「外を見ていたのは...そうだな。懐かしい校舎の外の景色を目に焼き付けておきたくてな」
「そっか」
胸元に花。
そして(卒業おめでとう)の文字。
俺は愛花のその姿を見ながら外をまた見る。
すると愛花が俺に寄り添って来た。
「どうした」
「...色々あったね」
「確かにな。...こうして卒業したら全てが懐かしいもんだ。昨日の様に感じる」
「そうだね」
そして俺達は外を見る。
生徒たちが帰り始めていた。
俺は外を見るのを止めてから愛花を見る。
「帰るか」と言いながらだ。
すると愛花は「うん」と柔和になった。
ああそうだ。
言い忘れていたが愛花は結論から言って100億円を手放した。
そして...手元に残す金額を少なめにしてから彼女は土地も財産も手放した。
全て彼女の意向だった。
俺はその事を尊敬に値しながら見ていた。
「春樹は...大学は通えるぐらいにするんだよね?今の家から」
「そうだな。...あの家がしっくりくるしな。お前が居るし」
「別に県外に引っ越しても私は追うよ。彼女であり婚約者でもあるから」
「...そうか。有難うな」
そして俺は愛花を見る。
愛花はニコッとしながら俺を見ていた。
それから俺達は手を繋いで階段を降りて行く。
するとそこに斗真が居た。
マリンさんも居る。
「よお」
「...よお」
「卒業おめだな」
「そうだな。いざ卒業となると寂しいな」
「そうだねぇ」
そして俺は斗真を見る。
何をしていたんだろうか?
そう考えながら見ていると斗真が「俺達はお前らが来るのを待っていたんだ」と笑みを浮かべる。
「...飯でも食いに行かないか」
「卒業記念の打ち上げみたいな感じか」
「そうだな」
「...そうか。なら行くか」
俺は斗真を見る。
斗真とマリンさんは頷き合ってから「じゃあ行くさー」と笑顔になる。
それから俺達は移動を開始する。
そして学び舎を見る。
「...」
「どうした?」
「いや。...全てが昨日の様に感じれられてな。...それで懐かしく感じるんだ」
「色々あったけどまあそんなもんだよな」
「そうだな。...行くか」
「写真でも撮るか?」
「それは良いな」
俺達は校門前に来る。
それから学び舎を背にしてから写真を撮影した。
そして歩いていると目の前から須崎姉妹がやって来た。
須崎シノンは杖を突いたまま。
「...よお。元気そうだな」
「...そうね。まあ元気」
「...シウは」
「私も元気です」
それから「...貴方達どこかに行くの」と聞いてくる。
俺達は顔を見合わせてから「ああ」と返事をする。
そして須崎シノンに向く。
「お前も来るか」
「...私は邪魔でしょ。...シウ。アンタだけでも行きなさい」
「それは無いね。貴方も来たら」
「何で私が行かないといけないの」
俺はその姿を見ながら「まあ良いじゃねーか」と苦笑い。
それから不機嫌そうな須崎シノンも引き連れて途中で合流した奈央と一緒にそのままファミレスまでやって来た。
そして俺達は卒業記念の打ち上げをする。
☆
「...確かに楽しかった」
「そうか」
俺は須崎シノンと一緒に外に出ていた。
ちょっと疲れた。
それから俺は須崎シノンを見る。
須崎シノンは「...人は苦手」と答える。
そんな言葉に「そうか」と俺は返事をした。
「だけど貴方に出会ってから私は人の見方が変わった気がする」
「人の見方?」
「そう。貴方は不思議な人だと思う。魔法を使える様な」
「...俺はそんな偉い奴じゃねーよ」
「だけど私は貴方に出会わなければ全てを知らなかった」
そして須崎シノンは笑みを浮かべる。
それから「卒業おめでとう」と言ってくる。
俺はその言葉に「やれやれだ。だけどお前がそう言うなら有難く受け取っておくよ」と返事をしながら外を見る。
背後を見ると飯を食いまくっている連中。
仲間が居た。
「...貴方はいつあの子と結婚するの」
「俺か。...大学卒業したら直ぐと思っている」
「...坂本斗真は」
「知らん。どうなるかだな」
「知らないの。...貴方達友人でしょ」
「斗真は秘密主義でな」
そう答えながら肩を竦める。
すると須崎シノンは「そう」と返事をしながら「じゃあ坂本斗真の自らの父親とかは」と聞いてくる。
「斗真は一応、ケリをつけた」と回答する。
そう。
斗真は兄と一緒にマリンさんの為に父親から距離を置いて離れる事にしたらしい。
俺はその言葉を受けてから驚きを持っていたが。
だけど斗真の考えを応援する事にした。
「...そう」
「お前は何でも心配するんだな」
「これは心配じゃない。贖罪の様なものだから」
「...そうか」
そして須崎シノンは杖をまたつきはじめた。
それからファミレスのドアを持つ。
俺を見てきた。
その姿を見てから「?」を浮かべる。
「...入らないの」
「ああ。そういう意味か。...じゃあ」
そうしてから俺達はファミレスに戻る。
それからまた煩い中に戻る。
だけど悪い気はしない。
これが俺達の日常だしな。
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