第56話 STORY
☆佐藤愛花(さとうあいか)サイド☆
父親が亡くなった。
正直言って私は何にも感じない。
ようやっと死んだな、としか思えない。
鬼畜だろうか私は。
そう考えながら私は父親の亡骸を見る。
「じゃあそろそろ待合室に行こうか」
「そうだね。出ないといけないよね」
「...色々あると思うけど。結論言っても家族だしね。この父親も」
「...そうだね。まあどんだけ過ごしても家族だし。周りに励ましで言われなかったら気が付かなかったけど」
そう言いながら私はお姉ちゃんを見る。
お姉ちゃんは「...まあね」と返事をする。
それから私達は病室を後にする。
するとそのタイミングで春樹と須崎も戻って来た。
「...どうだった」
「...問題ないよ。春樹。有難う」
話しながら須崎を見る。
須崎は踵を返した。
それから帰ろうとする。
私は聞いた。
「どこ行くの」
「喪服とか取ってくる。叔父様の葬儀に合わせての」
「そうだね。私達もどうにかしないと。一回家に帰ろうか」
「うん。確かに」
「...」
須崎が私を見ている。
私はその姿に「何?」と聞きながら真剣な顔で須崎を見る。
すると須崎は「...春樹を頼む」と話してから去って行った。
私達は驚愕しながらその背中を見送る。
「...シノンちゃんも変わったね。色々と」
「確かにね。お姉ちゃん」
「...確かにですね」
それから私達はその場で別れた。
そしてお互いに喪服を取りに帰ったりした。
とは言っても私と春樹は制服。
お姉ちゃんは大変だな。
そう考えながら私はお姉ちゃんと一緒に帰宅した。
☆
「ねえ。彼方お姉ちゃん」
「何?愛花」
「私は生まれてきて良かったのかな」
かつての事を思い出す。
それはあくまで幼い頃の記憶だが。
私は...お姉ちゃんにそう聞いた事があった。
その時に私はお姉ちゃんをそのまま涙目で見ていた。
するとお姉ちゃんはこう言ってくれた。
「この世には使命を持たないで生まれて来る人は居ない。貴方は使命を持って生まれたんだよ」
という感じでだ。
私はその事を思い出し。
脳内出血でボケた父親の記憶を思い出す。
「すまなかった」という言葉を。
それから私は複雑な顔をしながら制服を整えながらハンガーに掛け直す。
そして私は明日の葬儀の為に準備をする。
それから私は荷物を置いた。
するとお姉ちゃんがやって来た。
「何か飲む?」
「うん?何か淹れるの?」
「そうだね。一応...紅茶淹れるよ。せっかく戻って来たしね」
「...分かった。じゃあ淹れてくれる?」
お姉ちゃんは快く引き受けた。
それからお姉ちゃんは紅茶を淹れに行く。
私はそれを見送ってから制服を改めて見る。
制服は完璧だな。
後はどうしたら良いか。
「ねえ。愛花」
「何?お姉ちゃん」
「100億円の少しを使っても良いかな」
「?...良いけど何に使うの?」
「...父親の葬儀費用で。お花をいっぱい買ってやろうって思って」
「それは...100億円もあるだよ?相続税で散っても相当に残ると思うけど。自由に使おうよ」
「それはわかるんだけどなるだけなら使いたくはないな」とお姉ちゃんは肩をすくめて話す。
それから「まあでも呪われたお金だけどあの人のお金だから」と話した。
「...分かった。その意思は尊重する」
「ゴメンね。でもあの人がそう望んでいるんだろうし。取り敢えず100万円ぐらい使っても問題無いと思うし」
「...だね」
「だけど何で愛花にそんな金額を遺したのかだね」
そんな会話をしているとインターフォンが鳴り響いた。
私は「?」となりながらドアを見る。
それからドアを開けるとそこに中年の丸メガネの男性が居た。
「あ、初めまして。わたくし、遺産相続を任せられた成宮法律弁護士事務所の成宮智昭(なりみやともあき)と申します」
「もしかして父親の...」
「はい。わたくしめに委任。生前に全て任せられました」
「...」
「此方名刺を。先ずはこの度はご愁傷様です」と言う成宮智昭さん。
私はその姿を見ながら考え込む。
それから失礼ながらも「すいません。弁護士という証拠はありますか」と成宮さんに聞く。
すると成宮さんは「証拠もそれ以外の関連も全て御座います。此方ら全て託されましたのでご説明致します」と話してくる。
「...何故、あなたに託されたのでしょうか」
「私は幼馴染で友人です。...彼の、ですが。だから任せられたのでしょう」
「そうなんですね」
「わたくしは...彼の全てを任せられた事...最期にとって誇らしいです」
そう言いながら成宮さんは鞄から書類を一式取り出す。
それから見せてきた。
私とやって来たお姉ちゃんはそれを見る。
遺産相続の話とかの記載がある。
「彼に亡くなった後に娘を守る様に言われた分。私はあなた方を守りますよ。必ず」
「...1回目ボケた時ですね」
「そうです。だけど彼は...何かそれ以前に考えていた様です。きっかけは...確か愛花さんの婚約者に関わった時が半分だと申しておりましたね」
「!」
私は驚きながらその顔を見る。
そのまま顔をお姉ちゃんと見合わせる。
まさかあのクソッタレな父親が?
考えられないのだが。
「何か誰かの影響はありそうですがね。ただしそれが正しいかどうかは分かりかねますが」
「...」
「...私はとにかく...彼の生前の考えに従って動くだけです」
「...有難うございます」
そして私達を見ながら「明日、わたくしめも葬儀に参加しても宜しいでしょうか」と話してくる。
その言葉にお姉ちゃんが「分かりました。いずれにせよ喪主は私になるかと思いますから」と応えた。
「有難うございます。最後までサポート致します。お約束致しますので」
「有難うございます」
それから私達は部屋に彼を招いて話を聞く。
私達はその話を聞いて書類を見つつ将来を見据えた。
取り敢えず...私達がどうすれば良いか。
よく分かった気が...した。
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