第3話意味深な視線の正体

三郷ききと待ち合わせをしている駅前で時間を潰していると何処かから視線を感じていた。

もしかしたら気の所為だったかもしれないが何処となく覚えのある視線だった。

辺りをキョロキョロと眺めていると不意に声を掛けられる。

「猛者。久しぶりだね。こんな所で会えるなんて思ってもいなかったよ…今日はどうしたの?何か予定がある感じ?」

元恋人である一人と偶然に駅前で遭遇したが本当に偶然だろうか…。

彼女は明らかに時間と場所を把握していたようにも思える。

何故?

三郷ききが情報を流しているとは思えない。

例えばSNSでつぶやいたりしたのを元恋人がチェックしているとか?

そんな悪い想像が思い浮かんで背中にはひやりとした汗が流れる。

「えっと…これから出かけるんだ」

「そうなの?デート?」

「まぁ。そんな感じ。今日はどうかしたの?」

「いいや。何もないけど。街をぶらついていたら猛者に会ったから声を掛けただけ」

「そう。じゃあまた」

「何?そんなに一緒にいるところ見られたくないの?」

「それもあるけど…特に用もないから…」

「なにそれ…元カノには用がないって?」

「まぁ。正直に言えば…そうだね」

「あっそ。じゃあ」

意味深な表情でその場を後にした元恋人に少しの恐怖感を抱いていたがすぐにそんな事を忘れ去ることになる。

「おまたせ〜」

三郷ききが駅前に姿を現すと僕はその姿に癒やされるような気持ちになる。

お洒落な姿に心を和ませてくれるような表情を目にして僕の心は浄化されていく。

「何処行こうか?」

僕の問いかけに三郷ききは小首をかしげていた。

「んん〜。水族館?」

「なんで疑問形なの?」

「なんかふと浮かんだだけだから」

「楽しみにしているのは飲みの方なんじゃないの?」

「バレてた?じゃあ昼間から飲むのは?」

「僕は良いけど。じゃあそうしようか」

「やったぁっ♡一週間に一度の楽しみだからねっ♡」

「だな。じゃあ行くか」

そうして僕らは昼間から営業している居酒屋へと向かうのであった。



昼間から一週間に一度の楽しみである三郷ききとの飲み会は始まったばかりだった。

僕らは長いこと飲むためゆっくりとしたペースでお酒を嗜んでいる。

昼間から時計の針が天辺まで行く頃まで飲むと三郷ききを家まで送り届ける。

「寄っていく?酔い醒ましにお茶でもどう?」

しかしながら僕はその言葉に首を左右に振って応えると駅まで向かう。

駅では昼間に出会った元恋人とはまた別の元恋人と遭遇する。

「猛者。久しぶり。元気してた?」

「あぁ…悪い急いでいるんだ」

「そう。また連絡するから」

「あぁ。じゃあな」

駅前で出会った元恋人に別れを告げると僕は急いで家へと帰るのであった。



急いでいたのにはいくつか理由があった。

飲みすぎて眠いのもあったし、酔っているというのに妙な視線を肌に感じて恐怖していたのもある。

僕らは一日中監視されているような気がしていた。

それに恐怖を感じていたのは僕だけだっただろう。

ききは気付いていなかった。

僕だから分かる視線。

それはきっと元恋人等の視線だったから気付けたのだろう。

本日から僕の恐怖に包まれた日々は始まろうとしていた。


とは言え。

この物語も一度ここで幕を閉じる。

端的に言って振るわなかったからだ。

ではまたいつかの機会で…。

                完

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九人の元彼女が同時に再接触してきたけど…これって偶然ですか!?←そんなわけなかろう…。運命でも偶然でもないストーカー化元ヒロインズ。だがしかし正ヒロインは他に四人いる。ヒロイン多すぎラブコメ ALC @AliceCarp

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