第44話 生意気


「な、なんでこんなのに載ってるの?」

 急にカオルがやってきて雑誌を見せてくる。

「ん?あ、カットモデルした時の写真だ」

 あの時の写真はこんなふうに使われるのか。

「そういえばカッコよくなったようなっ…てこう言うのはダメ!」

「え?なんで?」

「すぐ嗅ぎつけられてモデル、芸能界、って言ってくるんだから!」

「ないない」

 俺みたいなおっさんにそんなことあるわけない。

「あるの!実際SNSで拡散されてるかね?見つかったら追っかけられて家特定されてってやばいんだから」

 そんなにやばいのか、知らなかったなぁ。

「分かったからもうしないよ」

「遅いの!もうネットに拡散されてバズってるから」

 

「ハァ、またライバルがふえるし…」

 …俺にはなんのことだかさっぱりだな。


 ようやく落ち着いたみたいで俺がいれたミルクティーを飲んでいる。

「落ち着いたか?」

「はぁ、まぁね」

「んで?本当は何しにきたんだ?」

「さっきのが本題!こっちはどうでもいい」

「どうでもいいことないだろ?なんだ?」

「パワレベをしたいのよ、それでお願いしたいの!」

「パワーレベリングか?何のために?」

「クランよ!ク、ラ、ン!」

「あぁ、そういえばそんな話あったな」

「その程度の話よ」

 まだブスくれてるな。


「で?クランを立ち上げたんだろ?」

「そう、本当はスズトがトップのはずなんだけどね」

「あはは、それは悪いな」

「で、やっぱり最初は弱いのよ、ゴブリンが倒せない子もいるのよ」

「へぇ、そんなもんかねぇ」

「それでパワレベ!私達だってできるけど、人数がね」

「足りないのか?そんなにいれて大丈夫か?」

「スズトに頼みたいのは上の子達なの。もう天狗になってて言うこと聞かないから」

 そんな奴らいらないだろ?

「へぇ、そんなのクランから外せば?」

「いちいちそんなので外してたら育ったら出て行くだけでしょ?」

 まぁそうか、せっかく鍛えたのにな。

「分かったよ、それは俺が何とかしよう」

「よし!いったからね?」

「お、おう」

「明日の8時に4人には連絡してこの下で待たせるから」

「分かったよ」

 カオルはまだブツブツ言いながら帰って行った。


 翌朝8時に下で待ってたらなかなか来ないな?

 9時ごろになってようやく全員が揃った。

「遅かったな、んじゃ始めるか」

「は?ち、ちょっとイケメンだからって何する気よ?」

 生意気そうな女の子だな。

「はぁ、8時からなのにもう9時だな、1時間押してるからさっさと行くぞ」

 来たのは4人だから、4人の手を掴み転移する。

「こ、ここどこ?」

 人気のないオーストラリアのダンジョンに来た。

「ダンジョンだ、何階層まで行ったことあるんだ?」

「20は楽勝ね」

「ほう」

 まだ20か、

「俺は30までならいけると思うぞ!」

 何を張り合っているんだ?

「へぇ、じゃあまだ攻略はできてないんだな?」

「「「「へ?」」」」

 4人は口をポカンと開けている。

「ほら行くぞ、お前らの実力みたいんだから」

「く、くそ!みせてやろうじゃねーか!」

「おう、見せてもらおうか」

 ダンジョンに入るとゴブリンが沸いてるな。

「な、なんて数だ!」

「ち!くそ!」

「ファイヤーウォール」

「そんなんじゃ足りねえよ!」

 とみんな足掻いてるな。

「ほら?どうした?強いんじゃねーのか?」

「く!くそ!」

 1時間かかってやっとゴブリンの軍勢がいなくなった。


「酷いな、これで1時間か」

「う、うるせえ!できるのかよ」

「なら次は俺の番だな」

 2階層に向かうとオークの軍勢だな。

「げっ!やばい!」

「逃げろ!」

「まぁ待てよ!見てろよ!」

 と剣技だけでオークを倒していく。

 まぁこんなの遊びだな。

 10分でカタが付いた。

「よし、次はお前らだな!」

「ま、待てよ!そんなの無理だって!」

「あ?」

“ザン”

「え、ウギャアァァァァァ」

 足に剣を刺す。

 抜いて回復魔法だ。

「ひ、ひぁあ」

 こいつらは口だけだな。

「俺はお前らのために呼ばれた。お前らの根性を叩き直すためにお願いされたんだ」

「わ、わかりました!これからはちゃんと」

「言葉だけじゃわからないな、ほれ次だ!行くぞ!」

「「「「はい!」」」」

 そうして10階層までやらせて、元のホールに戻る。

 カオルが待っていたが4人はヘトヘトだな。

「ほら立て!」

「「「「はい!」」」」

 何とか立ち上がる4人は素直になっていた。

「カオル、これでいいか?」

「「「「すいませんでしたぁ」」」」

「う、うん、いいけど、何やったの?」


「それは秘密だ」

「はぁ、あんた達分かった?上には上がいるんだからね?」

「「「「はい」」」」

 カオルは今までとの違いにビックリしている。

「本当に大丈夫でしょうね?」

「ん?何なら明日もやるか?」

「すいませんでした!」

「もう勘弁してください」

「俺たちが悪かったです」

 と半泣き状態だ。

「はぁ、まぁ、いいわ!じゃあこれからはちゃんとやるように!」

「「「「はい」」」」


 俺もクランに貢献できてよかったな。

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イクシード あに @sanzo

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