第15話 完璧なおとぎ話
ミラジェーンは今日もカイルの隣でゾクゾクしたりキュンキュンしたり忙しい。
以前悪役令嬢と呼ばれたミラジェーンはもういない。
天使の顔をした夫に寄り添う天使にも負けない美しさを持つ妻。今やこの仲睦まじい夫婦は皆の憧れである。
暖かな陽だまりの中、カイルはミラジェーンの手を取りゆっくりと庭園を歩いて行く。
「フフッ…あなたが私の世界に入ってこなかったら今頃私は修道女にでもなっていたのかしら?」
「ミラが修道院に行くなら僕は何になればいいのかな?修道士?」
「あら、カイルが一緒に来たら修道院で穏やかに暮らせませんわね。」
「僕がいると穏やかに暮らせないの?なぜ?」
カイルが試すような瞳でミラジェーンの瞳を覗き込む。この目にはめっぽう弱い。
ミラジェーンはいつも負けてしまうのだ。でも今日は負けるわけにはいかないのだ、いや…絶対に打ち負かす自信がある。
「そんなこと言って…カイルこそ穏やかに暮らせていけなくなりますよ。」
「僕はミラに初めて会った時から心穏やかじゃないのを知らない?」
「あら、もっと乱してしまおうかしら?」
「ふっ…そんなことミラに出来るの?」
少し冷たい目になるカイルにミラジェーンはゾクッとする。相変わらずカイルはミラジェーンの好きなことをしてくれる。なんて素敵な夫!
「大好きよ、カイル…私の愛しい旦那様。素敵な贈り物がありますのよ。」
ミラジェーンはそう言って微笑みながらカイルの手を取りお腹にそっと重なった手を添える。
「…え…⁈な……」
カイルが固まっている!何も言えないでいる!!初めて見る、うろたえているカイル!
「何か言って、カイル…」
ミラジェーンは優しくカイルに目を向ける、カイルはもう泣きそうな顔なのだ。
カイルはミラジェーンを思わず抱き上げる、でもハッとしてすぐに彼女を降ろす。
「ごめん!乱暴だった!!大丈夫?ミラ…あぁ…、どうしよう…どうしたらいいか分からない…ミラ…」
「カイル、嬉しい?」
「うん。あぁ…、ミラ、愛してる。」
カイルは膝をついてミラジェーンのお腹に口づけをしてから耳を当てている。
「もう…カイルったら、まだまだ小さいのよ。」
「ここに僕たちの子供がいるなんて…こんな奇跡…ああ、どうしよう…もういてもたってもいられない。」
「フフッ…穏やかじゃありませんこと…。」
「ミラ…やってくれたね。これはもう穏やかには暮らせないね。」
「カイル、私…幸せです。」
「ミラ…愛しているよ、どうしょうようもないくらい。」
――キュン…
―――完―――
悪役令嬢Mと天使の顔した冷血騎士様 篠キニコ @Ni_Ko
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