番外編・津島修修は見た③

離れの新居に帰った賢也と君子、

そして典子が親子水入らずで晩酌をしている。


するとそこへ

少し遅れて戻ってきた修が、

鼻を膨らませながら興奮した様子で

何か言いたげである。


その異様さに

無視をできない君子と賢也。


「何かあっだの?」


「どした?気味悪ぃべな」


「えっど…そいが…」


修が説明しようとすると

典子は冷めた態度で


「どうせ大したごどねんだべ?」


と言い放つ。

いつもは典子に言いなりな修だが、

この時はものすごい勢いで言い返した。


「大したごどだ!!実は俺…またすんげ〜もん見てまっだ!」


「何を?」


全員が修に注目すると、

修は不気味に笑いながら、

母屋の庭先で目撃した

手塚と菜穂子のラブシーンを

大袈裟に再現して見せる。


「どだ?すげ〜べ?」


だが3人のリアクションは低い。


「当たり前だべ。2人はアベックだもの」


「そだな。当たり前だ」


「そんなことより、何で母屋さ残ったんだ?わざとが?」


問い詰められた修は、

目を泳がせながらボソボソ言い訳をした。


「だってよぉ…、また何が見えっがど思っで…」


すると3人は

声を揃えてこう言った。


「バカっ!!」


「え?え?続ぎ知りたぐねえの?俺は知りて〜!!」


修の良からぬ詮索に、

津島家全員が呆れ果てた夜だった。


ちなみに手塚の口癖である

「バカ!」は、

この津島家から受け継がれたものである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る