番外編・津島修は見た①

離れの新居で飲み直している典子と風子のもとへ

修が慌てた様子で駆け込んで来る。


「ハァ、ハァ、ハァ……」


「修ちゃん、どうしたの?」


風子がキョトンとしながら尋ねると、

修は鼻を膨らませながら

興奮気味に話しはじめる。


「今さ、婆っちゃのとこにスマホ忘れでまっで、取りに行ったっきゃさ。したっきゃ(そしたら)…すんげぇもん見でまっだ!!」


それを聞いた典子は

いつもの事だとばかりにスンとしながら


「何見たんだ?どーせたいしたごどねんだべ?」


「大したごどだぁ!!」


「アハハ!修ちゃん興奮しすぎ!で?何見ちゃったの?お化けでも見た?」


「ちげよ!そいが…大樹くんと菜穂子ちゃんが…縁側で…チューしでだ!!」


「チュー!?」


「そんだ!大樹くんが菜穂子ちゃんに、ブチューっで!!」


オーバーリアクション気味で一人二役を演じながら、

その場面を再現する修に、

典子と風子は腹を抱えて爆笑した。


「アハハハ!」


「マジで修ちゃん最高〜!!」


「まったぐ…。ずいぶんなげぇごど見でだんだなぁ?」


呆れている典子に

修は困り顔で詰め寄る。


「え?え?…わい(俺)、どしたらい?今戻ったら、もっどすげぇ展開になっでっべな?スマホ…どしたらい!?」


すると、

典子と風子は声を揃えこう言った。


「どうもすんな!!」


二対一で惨敗した修は

その場で崩れ落ちた。

だが風子と典子は何事もなかったように


「もうアタシもあっちに戻れないな〜。てことで、今夜はこっちでお世話になりま〜す!」


「いよ!そうと決まればもっど飲むべ!」


修はスマホを取りに行けないまま、

泣きそうな顔で二人のホスト役を担った。


「修ちゃ〜ん!氷まだ〜?」


「早ぐ持ってごい!」


「今行ぐ〜っ!!」


修は母屋の様子を気にしつつ

眠れない夜を過ごした。


「続き知りで〜!!」

















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