第3話 遊園地デート(前編)

 それから俺たちは2人で遊園地に来ていた。急遽決めたデートだったからか行くところがここしか無かったのだ。


 とは言っても俺は特にアトラクションが苦手という訳では無いし、茜に関しては大好きな部類なので問題は無い。


 十分に楽しめるだろう。


「久しぶりですね先輩。遊園地なんていつぶりでしょう」


「だなー、2年ぶりくらい?」


「それくらいですよね。付き合った当初に来た記憶があります」


 俺と茜が付き合ってすぐ、初めてデートに来たのがこの遊園地だった。


 それまで女性経験が無だった俺はデートの定番と言えば遊園地という謎の偏見があった。


 結果として幸運なことに大当たりを引いたわけだけど。茜がアトラクション系が大好きだということを知れたのだ。


 今となってはあの時の自分に感謝している。


「早速行きましょう、先輩!結婚して初めてのデートですよ。私は張り切っています!」


 そういって茜は俺に満面の笑みを向けてくる。楽しみな気持ちが思いっきり表に出ていて可愛らしい。


 これはもう期待に応えるしかないだろう。帰る時に心の底から楽しかったと言って貰えるようエスコートしよう。


「そうだな、何に乗ろうか」


「私、乗りたいやつがあります。それに行きたいです!」


 どうやら茜が乗りたいと言っているやつは最近この遊園地に出来たものらしく、生では『ドラゴンスライダー』とのことだ。


 名前からわかる通りジェットコースターでありテレビにも紹介された最近有名なアトラクションらしい。


 日本でもトップレベルに怖いらしく、怖いもの知らずの茜にとっては興味をそそるものなのだろう。


 アトラクションが嫌いという訳では無いけど、俺は特別乗りたいとは思わない。わざわざ自分から恐怖に突っ込むのは違うし。


 まあでも茜が言うのであればどこでもついて行きますとも。


「これか」


「これですよ!うわぁ、大きいですねー」


 本当だ。遠くから見ても大きいとは思っていたが近くに来てみると迫力があるな。


 コースター自体が龍を想像させるデザインになっておりドラゴンスライダーの名に恥じぬドラゴンっぷりである。


「並んでるな」


「ですねー。時間かかりそうですけど大丈夫ですか先輩」


「大丈夫だ。茜のためなら何時間でも待てる」


「もう先輩ったら」


「ドラゴンスライダー、1時間半待ちでーす!」


 1時間半か、相当待たないといけないが…茜の話していればあっという間だろう。


「じゃあ待つか」





 しばらくして俺たちの順番がやってきた。茜は恍惚な表情をしている。


 ジェットコースターで普通こんな顔するか?いや、茜なら有り得るか。


「お待たせ致しましたー。どうぞ楽しんでいってくださいね!」


「どうもー」


 人の良さそうな女性のスタッフに連れられて建物内に入っていく。


「先輩?何楽しそうに話しているのですか?」


「ん??」

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出来たてホヤホヤの年下お嫁さんは清楚だけど圧が強い minachi.湊近 @kaerubo3452

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