第5話

「戸川…さん?」

加藤は何が何だか分からない状態で唖然とした

戸川が紙皿に

「熱」「目に見えない」「断面」「使用制限」「使えない」「理由」

とマジックで書いた上に棚から出したお菓子を載せて目を瞑り食べだした

「戸川さん…?」

ある程度戸川がお菓子を食べ尽くした後に目を見開き紙皿を重ねて破ってばら蒔いた


「繋がった…」


「は?」


「加藤!防弾チョッキと特殊警棒、それと拳銃、あと酸素缶用意!」

「最後のなんです?意味あるんですか?!」

「私の理論が正しければ初手を防げばタカツは何も出来ない…タカツはabilityをフルに出せずに終わる…加藤、アタシを信じろ」

しばしの沈黙

「都合の悪い事は今は言えないと言う警部…随分と都合良すぎませんか?!」

「時期がきたらちゃんと言う…でも今は言えない…でもアタシはこれでability持ちに勝った…だから1人でも勝ち続けてここにいる!」

2度目の沈黙後に加藤が口を開いた

「………で?俺は何をすればいいんです?」

「ありがとう…加藤…さっきも言った物と…これ」

戸川はスマホを用意し画面を見た加藤は驚いた

「はぁーーーー?!こんなもん何に?!」

「大丈夫、私達は負けない」

そう言った戸川の顔は自信に満ちていた



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


24時間後…


待ち合わせのビル入口に戸川と加藤がいた

「戸川さん、本当に勝てるんでしょうね?!」

「大丈夫、この場所を指定しているのに何もまだしてこないのは高津は勝つイメージしかしてなくて慢心してる…もうトラップはかけた」

加藤は両手で拳を作り叩いた

「人間なめんな!やってやりましょう!」

「その意気だ!加藤!」

そういい戸川が加藤の背中を叩き2人はビルに入っていった



高津は505の部屋の済で物陰に隠れて部屋の入口を見張っていた

505は空きテナントで前の借り主が夜逃げしたのかまだ棚や机が雑に置いてあり隠れるには充分

「ただの人間を片付けるなんて造作もないな…こんな事で三日月に恩を売れるなら安いもんだぜ…なんかでも…今日はバカに蒸すな…クソ…汗まみれだ、それになんか…喉が詰まる…緊張なんてガラじゃねぇのに」

テナントの入ってない部屋なので電気がなくビル管理用のダクトからの送風しかないせいか高津は汗をかくと同時に圧迫感みたいな物を感じていたその時、部屋の外に人の気配を感じた


ー来た…そのドアを開けて中に入ったら最後だー


高津は右腕の力を抜き腕をダラダラさせた、これが高津の構えなのだ


ギィィィィィ…


少し建付け悪いドアが開き薄暗い部屋の中に人が入ってきたのを確認した高津は力を抜いていた右腕を下から上に振り上げ何かを飛ばす動作をした


「ざまぁみろ!!これで1人は終わりだ!」


パァン!


部屋に大きな空気の破裂音が響いた

と同時にフロアに火災ベルが鳴り響きスプリンクラーが作動し部屋は水浸しになった


「なんだぁ?!」

高津が水が降り注ぐ中、自分が切った物を確認しようとすると

「こんのぉぉぉ野郎ぉぉぉぉぉ!」

加藤が部屋に勢いよく入ってきた


「なんだ!何が起きた!クソ!」

高津が焦って左腕を振り加藤の胴体めがけて何か放ったが


ガキーーン!


加藤の防弾チョッキを捉え体が吹っ飛んだが加藤は五体満足だった


「ゲハァ!いってぇぇな!この!」

起き上がりなおも加藤は高津目掛けて猛突進


「なんだ!なぜ切れない!なんだ!」

高津が万が一用意していた拳銃を抜く直前加藤の右ストレートが高津の左頬を捉え高津が吹っ飛びスプリンクラーが止まった


ガァァン!ビチャ!


加藤のパンチがいいところに入り高津は1発でダウン


「なぜだ!なぜ…」

狼狽える高津を無視し問答無用で加藤が手錠をかけた

「知らねぇよ、ざまぁみろ!難しい事は今来る俺の上司に聞け」

加藤は持っていた酸素缶を吸入していると戸川が入ってきた

「アンタは自分のabilityをキチンと理解してない…それが敗因だよ」

戸川が部屋に入ってきた

「敗因…?なんだそれ!」

「アンタのability…それは空気中の酸素を圧縮し高密度にして熱した物を鋭くしを瞬間的に作り出し相手にぶつける、だから切り口が電気メスで焼いたみたく出血が少なかった」

高津が戸川を見上げる

「あぁそうだ、俺は気体…の密度を変えられる」

「それだよ、アンタは加藤を殺さなかった、いや、殺せなかった。なぜなら室内だったからだ。室内だと酸素の量が少ないから、2人も全力で殺したら弾切れみたいなもんだ、アンタは操れるけど無からは作れない、使いすぎたら威力が出せない。それにアンタは長期戦を想定しない。その証拠に囮の空気人形の首を斬ったろ?一撃で相手を殺す事に慣れすぎてるからね。それにこの部屋暑苦しく感じるでしょ?この部屋のビル管理側のダクトを止めた、この部屋だけずっと換気されてない、だから余計に酸素の量が少なかった」

「だからって…アイツの胴体は切れなかった!何故だ!」

「防弾チョッキだよ、それにスプリンクラーだ、これだけ水が降っていれば圧縮空気を飛ばしても減速する、スピードが無ければ威力も無い。さて…高津、あんたに指示を出してたのは…」

高津が小刻みに震え口を開いた

「俺を、俺を早く安全な場所に連れてってくくれ!俺が失敗したのももう知ってる!大人しく捕まる、拘束衣も着る、裁判もうける!だから!だから俺を」

「だから!それは誰なんだよ!」

加藤が高津の胸ぐらを掴みながら引き起こそうとすると


「お喋りな人アタシ嫌い」

「ひ、ヒカ…!」


急に湧き出したのか銀髪の女が大型のナイフを高津に突き刺した


「ぐぇ!助けて…ヒカル…」

高津は血を吐きながら命乞いをした

「?!なんだどこから出てきた!」

加藤が取り抑えよう手を伸ばすと

「加藤!その女に迂闊に近づかないで!底がしれない!」

戸川の警告を無視した加藤は銀髪の女の胸倉を掴む瞬間、女は余裕で交わしナイフの柄で加藤の顔を殴った

「なんだ!クソ!」


「フフっ遅い遅い」


パァンパァン!

戸川が隠し持っていた拳銃で後ろから女に発砲したが後ろに目があるのか女は戸川の姿も見ずに交わし戸川の持っている拳銃目掛けて太ももに装備していた投げナイフを投げた


カツン!

パァン!


狙いがズレたのか戸川に当たらず拳銃にナイフが当たり衝撃で発泡させて拳銃は戸川の手から離れた

「戸川さんばっかりに気ぃ取られてんなよ!」

殴られた加藤が警棒を出してナイフ目掛けて降ったがそれを素手て受け止めそのまま取りあげて加藤の横顔を殴る、空いていた左手で押さえこもうとした戸川の鳩尾目掛けて掌底

「ウゥ!」

戸川は呻き声を上げてその場に倒れ込むと

「戸川さん!しっかり!」

流血して視界がぼやけていた加藤は一瞬気を取られそのまま女に後ろを取られ羽交い締めにされた


「2人ともよっわ!よくタカツに勝てたね?あ、タカツが弱かっただけか…アハ」

羽交い締めにされた加藤は胸ポケットに入っていたボールペンを取り出し女の太ももに突き刺した、痛みが走り加藤を突き飛ばす


「イッ!痛い…痛い…でも気持ちィィィィ!」


歓喜にも似た声をあげ女は傷口の血を舐めた


そんな時


パチパチパチパチパチパチ


拍手が聞こえ音の先を見ると男が立っていた


「久しぶりだね、戸川、タカツに勝ったくらいで満足かい?加藤君は凄いなぁヒカルに一撃入れるとは」

「三日月ぃぃぃぃ!」

戸川が叫ぶと

長身の男がとても小さな声で


「お前…いつから俺を呼び捨て出来るほど偉くなったの?ふざけた態度取ると…2人ともすぐに殺すよ?」

そういい男が消え次瞬間戸川の首を締めていた

「てめぇ!戸川さん離せ!」

加藤が長身の男に迫ったがその瞬間男は消え高津の前にいた


「タカツ…やっぱり負けたか…」

「三日月…さん…助け…」

「タカツ…君はどれだけ僕を失望させる気だい?そんな君を助けるメリット僕にはないよ…いつも言ってたろ?訓練はしとけってabilityは万能じゃないんだ、それに助けたくても時間が過ぎてるよ、血が赤黒いな…肝臓をやられてる、もう失血で意識が飛ぶよ」

「三…日月さん…ミカ…」

高津は何かを言いかけて事切れた

「さて、改めて…加藤くん、僕は「三日月 宗近」だ、よろしくね。あ!そうそう君に」

「加藤に変なこと…!」

「黙ってろ戸川…次俺の許可なく発言、行動してみろ、死んだ事すら気付かないように2人とも殺してやるから」

戸川の顔が真っ青になった

「ヒカル〜戸川の事よろしくね、でも近づき過ぎちゃダメだよ〜」

「はい、三日月さん」

ヒカルと呼ばれた銀髪の女が戸川の前にきてナイフを構えた

「よし、これでゆっくり話せるね加藤くん、あ!この前のコーヒーのお代はいらないよ」

「そんな事言いに来たのかよ?アンタは。暇なんだな」

加藤の言葉には怒りが込められていた

「僕は君が言う程暇じゃなくてね、タカツを倒してくれてありがとうね、最近言うこと聞かないから困ってたんだ。タカツを倒した君に聞きたい、僕は君に興味がある、僕と一緒に来ないか?ちなみに戸川の答はNOだったよ」

「俺はabilityなんて持ってないぞ?そんな俺をなんで?」

「何か加藤君は勘違いしているね?abilityはあるに越したことはないけどその前に僕は「誠実で良い人間」が好きなんだよ、優秀ないい人間だけが統治する社会を作りたい。だからability有る無しに関わらず良い人間は殺さない…それを信条にしてる。タカツは僕を裏切った…君達すらも騙した不誠実な人間を君はあの状況でも拳銃を使わずタカツを人間として逮捕しようとした、君は良い人間だよ、周りを見てみろよ?タカツにやられ損ね君は未詳なんてゴミに飛ばされた…嘘も何も言ってないのにね、職務を忠実に行ったのにその扱い…嫌にならないかい?僕は君をきちんと評価するよ?どうだ?欲深く数の暴力を使う悪どい人間達を一緒に掃除しないかい?」

「フフ!アハハハハ!人間なめんなよ!てめぇになんかつくかよ!俺はお前も逮捕する!」

「逮捕?やれるもんならやってみるといい、ヒカルー?戸川見張っててね、少しでも怪しい動きしたら殺していいよー、でも近づき過ぎちゃダメ、戸川は何か隠し球を用意してるかもだから。さてと久しぶりの運動だ、加藤君は全力で来るといい…君の全てを否定してやる…」

最後の言葉は氷のように冷たく鋭い言葉だった、ジャケットのボタンを外しネクタイを緩めながら三日月がゆっくり歩いてきた

「加藤くんは何を使ってもいいよ、拳銃、警棒、その辺のモン…好きな物を使って本気で僕を殺す気でやりなよ」

額から出た血を拭き加藤は

「ずいぶんと余裕だな…」

「ヒカル?今日の夜何食べようか?」

「三日月さんの好きなものならなんでも」

「そういうのは良くないな、いつも言ってるだろう?ちゃんと自分の意見を…」

加藤を無視して三日月とヒカルが話を始めた

「…てめぇらは留置所でプレート飯だ!」

「?プレート飯か…カフェご飯ってランチはいいけど…」

「ふざけやがってぇ!」

「加藤!ダメ!」

戸川が制止したが声は届かず加藤が左手で顔をガードしつつ右手で三日月を殴ろうとした瞬間

そこに居たであろう三日月が消えていた

まるで煙にのように

「……え?」

「加藤君、言ったろ?殺す気でこいと」

声のした方向を向くと加藤の右真横に三日月が立っていた

「いつの間に!」

加藤が左手で三日月の脇腹を狙ったがまた消えた

「…え?…何?!どこに?!」

加藤が当たりを見回すと戸川が

「加藤!後ろ!大兼、あんたは楽でいいよねアタシを見てるだけだから、いいの?加藤は強いよ?」

「あーめんどくさいなぁ…いくら強いっても「持ってない」側でしょ?そんなのに…」

「そんなのに三日月がやられるかもね…油断しまくってるから…アンタどうすんの?このまま三日月がやられたら」

戸川がニヤつきながらヒカルを挑発するように言った

「うるさいなぁ…もう殺しちゃうかなぁ…この女ァ!」

ヒカルが戸川にナイフを刺そうとすると

「ヒカル!いい!その距離から戸川を監視しとけ!そいつと喋るな!引っ張られるぞ!…しかし酸欠状態にさせるっていいアイディアだ…戸川、君の先を見越すのは相変わらず凄いね」

三日月がペットボトルの飲料を飲みながら酸素缶を拾った

「いつの間に…」

「僕のはそういう能力でね、どこでも瞬時に移動ができるんだ、制約はあるけどね」

加藤は拳銃を抜き三日月に向けた

「動くな!この距離なら!」

「お?いいよ、撃ってみなよ、ほら?」

「俺が撃てないとでも…」

加藤が口を開こうとした時

「口を動かしたら刺す…」

ヒカルが戸川に釘を刺す


「いやいや、だから撃っていいって…あ!そうかじゃあこうしよう」

加藤は濡れた床に膝をついて座った

「なめんなよ!この野郎!」

「このパンツ気に入ってるんだよね、濡れるの嫌だなぁ…ほら撃ちなよ」

加藤は狙いを定めていたがトリガーにかけた指が震えていた

「君…ダメだよそんなじゃ」

三日月が言い終わる前に加藤の目の前いた三日月がまた消えた瞬間

「撃てって言ったのに」

加藤が三日月を捉える前に強烈な右パンチを顔面に浴びせ加藤が反撃するタイミングでまた消えて反対側から横脇腹に膝蹴り

「側面は何もないんだよね〜」

今度は加藤の軸足めがけ三日月が蹴りを入れると加藤は体勢を崩したよろけて倒れそうになるが倒れる側に三日月が移動し左パンチを2回、その後また消えて右パンチ

傍目に見ていると三日月が何人もいるように感じる、何度も瞬間に位置を変えているからだ。加藤は前かがみ倒れ込んだが拳銃を三日月に向ける

「…なんだよ…クソ…人間…なめんなよ…」その目は色々な感情が入り交じっているように見えた

「舐めてなんかないよ…舐める理由すらない、君のようにabilityを持たない人間を…」

「うぉぉぉぉ!」


パァン!


加藤が発砲した


しかし三日月はまた消え加藤の目の前に立った

「言ったろ?当たらな…」

「三日月さん!」

ヒカルが叫ぶと

三日月の頬に一筋の傷がついた

「ん?おぉ掠ったのか?!ヒカル、いつも言ってるけど追い詰められた人間は凄いね…」

なぜが加藤は満足そうな顔をしながら

「…へへ、当たるじゃん…余裕見せすぎるからだ…」

三日月が瞬間移動をし加藤から拳銃を取り上げ加藤に向けた

「さて戸川…この状況どうする?加藤君が…」

「戸川さん!こんな奴に俺負けないっす!だから…」


パァン!


「え…?」


三日月が防弾チョッキの隙間に拳銃を撃ち込んだ


「僕の許可なく勝手に喋るなよ、加藤君…俺と戸川が喋ってるのに…良い人間でも僕の言いつけを守らない人間は…」

「加藤!…三日月!あんた!」

「ん?俺は元々こういう人間だよ?お前が視た時と結末が違ってるか?」


「ガハァっ…こんなもん…なんでもねぇ」

加藤が血を吐きながら起き上がろうした

「??凄いな君はフィジカルお化け…」

「良い人間は殺さない?アンタ…おかしいよな…ここで俺を殺したら…立派な信条に嘘つくことになる…前に俺に言ってくれたよな?いい人間だって…自分で認め…事…ガハァ…手のひら返し…今…俺…達…2人共や…られて…死んだら2人で呪ってお前が…死ぬま…で…嘘つきと言い続けてやるから…な…なめんな…よ…ブッ!!」

そう言い加藤は力を振り絞って三日月に口の血を吐いた

「お前!三日月さんに!」

ヒカルが叫ぶと三日月は今度は戸川に拳銃を向け

「……ヒカル、戸川は僕が見てるから加藤くんを治してあげて」

「は?良いんですか?!」

「こいつに嘘つき呼ばわりされるの度し難い、それに元々ヒカルに頼む気だったからさ」

ヒカルは一瞬考えこんだが

「ヒカル!早くするんだ、彼が死んだら治らない!」

「分かりました…」

ヒカルはナイフをしまい両手の人差し指と親指を合わせファインダーにして加藤を捉えた

するとじょじょに加藤の出血が止まっていき服についた血も消えていった


「え…痛くない…」

加藤が不思議そうに撃たれた所を触って確認

「戸川と加藤君、これがヒカルのabilityだ、貴重だろ?種明かしはしないけどね」

加藤が起き上がろうとしたので三日月は戸川に銃を向けつつ

「おっと動くな。君は助けたけど戸川は助けないよ?ヒカル、そのままこっちにおいで」

ヒカルが加藤を睨みながら三日月のそばにきて三日月の体を触った

「加藤君、一応君を助けた者として聞くけどどう?…どうかな?こっちにつかない」

「こんなもん屁でもねぇしお前に治してくれなんて頼んでねぇよ…そもそも勧誘してんのに撃つような頭おかしい奴なんかクソ喰らえだ!それに…」

「それに?」

「俺がお前に絶対手錠かけてやるから!」

ヒカルがナイフを出したが三日月が止めた

「そっか…つれないなぁ…まぁヒカルも怒らないで、2人ともタカツを処理してくれてありがとうね、とても興味深い事が見られた、戸川がability持ちと何度かやり合ってたのは知ってるけどタカツは比較的攻撃寄りのタイプ、それを2人がかりとはいえ倒すとは…abilityが全てという訳じゃない事が分かっただけで大収穫だ、じゃあね〜戸川〜加藤君」

「…お前…三日月さんに…絶対に許さない…」

ヒカルが殺意を込めた視線を加藤に向け三日月が両手を叩くと2人は消えた


「加藤?大丈夫?!」

戸川が加藤に駆け寄った

「大丈夫っす、傷がないんで…」

「良かった…本当に…」

「でも俺の知ってる戸川さんはあんな脅しに屈する人じゃ…」

「大兼は付け入る隙があっても三日月は全然無かった、だから何もできなかった。頭がキレる三日月と戦闘能力の高い大兼 ヒカル2人と戦って今こうしてられるのは奇跡…あの二人は控えめに言っても化け物よ…」

「…?!もしかして…昨日話してたRACKから逃げたっては…?!」

「……私が尊敬していた上司でもあり戦友だった男…三日月 宗近…未詳を作った男」

「とりあえず未詳に帰りましょう…立てますか?あ、あれ…どうすんすか?」

加藤がタカツの遺体を見ながら言った

「ちょっと痛いけど大丈夫、アレは適当に匿名電話として通報して警察に回収させるよ、このままにできないからね。こんなんが続くよ?大丈夫?加藤。」

「誰に言ってるんです?!俺はあの三日月って奴をボコボコにして手錠かけるまで未詳にいますよ」

そういい加藤を起こし肩を貸した

「…その日がきたら乾杯しようね、加藤」

「…すみません…俺飲めねぇんすよ…」

そういい2人は部屋を後にした


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「よっと、ありゃなんか位置がズレたな」

2人は神座町の一角の飲み街にいた

「三日月さん、ここは?」

「うーん…前来た時より少し変わってるみたいだから座標がズレたんだ、ごめんごめん」

「…いいのですか?あの二人をこのままで」

ヒカルが不思議そうに三日月に尋ねた

「今日の所はこれでいい、タカツも処分できたからさ」

ヒカルが何かに気がついたのか

「あ!昨日三日月さんが言ってた未詳の後継者って…」

一瞬三日月が物思いにふけ飲み屋街の看板を見ながら小さな声で

「RACK唯一の生き残りで信じてリスペクトもしている戸川さ…さてさて…こっちも色々仕込んでやるか〜用心するのに越したことないし…」

「用心?」

「あぁ、あのビルを監視してる連中がいた、RACKの意思を継ぐものか…どこかの政治屋の差し金か…」

「私が殺りますよ?三日月さん、めんどくさい奴は全員」

「ありがとうヒカル、でもね?出鼻で先に処理をするとすぐに隠れられるから少し泳がす事も必要なんだよ、だから少しは自由にさせとこう。捜し物は…想像だけど恐らく僕と一緒だ」

「捜し物…?」

「あぁ、abilityを消す力を持つability持ちさ」

「abilityを消す力?!」

「そう…どこかにいるはずなんだ、先に僕らで抑えようね、頼りにしてるよ。とりあえずその足の傷を診てもらわないと…このあたりにいい闇医者がいるからさ」

三日月はヒカルの手を引っ張り繁華街に消えていった


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


同時刻


会議室のような部屋でモニター前に1人の男が座り誰かと話していた


ー高津 昇死亡確認、三日月 宗近と大兼 ヒカル共に生存を確認、戸川接触確認ー


「サンプルは?」


ーすみません、両名共にサンプルは確認できません、高津のサンプル取りますか?ー


「いや…それはいい、必要なのは三日月と大兼の分だ、引き続き調査を、人員強化の件は追って連絡する」


ー了解しました、未詳の方に監視は?ー


「とりあえず放っておけ、戸川はまだ話しが通じる相手だ」


ー了解しましたー


「………やはり生きてたか…三日月…厄介だよお前は…!!」

男は吸っていた電子タバコを壁に投げつけた




ーーーーーーーー了ーーーーーーーー



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Singularityー未解決事件詳細保管解決課- 乾杯野郎 @km0629

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