@kaluako

第1話

息をしていても苦しいのならいっそのことと、自らを沈める。


最初は守っていたはずだった。

どう息をすれば痛くないのか。何を避ければ苦しくないのか。

手を尽くしても守りきれなかった。


苦しみから逃れるためなら愛すら手放す。



溺れる苦しさも段々と麻痺していった。

どうしても耐えられない時には呪文を唱えた。

これに耐えたら全て終わらせてしまおうと。



本当に欲しいものは手に入らないから要らないと自分に言い聞かせた。

どろどろの感情を外から見えないように整えて。

無理に変えていくうちに自分の心の形は崩れていき、崩れた心は愛を貯めることが出来なくなった。



そんな時に貴方に出会った。


自ら沈む身体を取り、引き上げてくれた。


欲しかったものは貴方が持っていた。


何が自分にとって何が善いことか悪いことかも判断できなくなった私に貴方はひとつひとつ教え込んでくれた。

愛と共に。


崩れた心を丁寧に治すように。

ゆっくりと愛が注がれる。


ずっと欲しかった愛は暖かかった。



いつからか、話し方が貴方に似ていく。

繋ぐ手が段々と心地よく馴染んでいく。

こうして沢山の愛が形になって表れた。



色濃く残った苦しみの記憶は、何度も私を過去に引き戻す。

それでも今は愛の暖かさを知っている。

何度過去に引き戻されても貴方の元に帰りたい。


苦しみの色が薄れ、貴方との美しく幸せな色が塗り重なると信じて。

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