第5話 商業ギルド

リンが話し合いをうまいことまとめて(私が言いくるめられて)トニーについて、現在すぐ横の商業ギルドに向かっている。

「トニー、本当に私が面倒見ないとダメ?」

「ダメです。そうしないと外せないとリンが言ってたではないですか。」

私は私に引っ付いて離れなくなった少年を指さしながら聞いた。少年が私の首に腕を回して、両足を私のお腹のあたしに回してしっかりと引っ付いたことにより私は立つことすらできなくなってしまった。仕方がないので私は浮遊魔法を使ってトニーの後ろをついている。そもそも、私たちが商業ギルドを目指している理由は、リンがこの少年を外す条件として提示したこの町に定住して少年を育てることというものであり、私は家を持っていなかったので商業ギルドで家を紹介してもらうためである。

「そうだけど…私としても最終手段だけはあまり使いたくないから諦めただけで、別に外せないわけじゃないんだよ。だから、受け取ってよ。」

「無理です。エマ様、知っていますか?リンは怒らせるととても怖いのですよ。それと、最終手段って、魔法でその少年の両腕、両足を切断して拘束から抜け出した後に魔法で治すやつですよね。それはしないでくださいね。」

「分かってるよ。リンにも笑顔で釘を刺されたしね。というか、あの顔は一見笑顔に見えるけど、全く笑っていないよね。」

「ええ…そうですね。」

などとどうでもいい雑談をしていると商業ギルドに到着した。

――

商業ギルドに入ると筋肉ムキムキの男の人が立っていた。

「ようこそお越し下さいました。エマさま。」

男の人は私を見て非常に丁寧なお辞儀をしながら言った。

「えっと……どちら様?」

私が首を傾げながら聞くと横にいたトニーが苦笑しながら

「彼は商業ギルドのギルドマスターですよ。」

と言われた。

「なんでそんな人がここに?」

私は思ったことを素直に言ってみた。すると、商業ギルドのギルドマスターが非常に真面目そうな顔をして私だけに聞こえるぐらいの小声で

「エマ様を相手できるほどの職員がいないからですよ。」

と言った。

「……。」

「それよりもこちらへどうぞ!」

私が固まっていると商業ギルドのギルドマスターが私とトニーを連れて奥の部屋へと移動していった。

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願わくば、この望みが叶いますように! カエル @azumahikigaeru

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