イチ章★

女王様のシマα

確かに。確かに。

一度は。

私は陰のような人だから気にしないでと言いましたが。

やはり、私もヒトでありますから。

根は寂しがり屋さんですから。

やはり、ヒトってそういうものでしょうから。


独り頭の中で話している内に、気付きました。私の胸が黒く染まっています。

包丁が刺さっています。



社の外は騒がしかった。

黒猿達が、叫び声を上げたり、奇怪なダンスをしたりしながら、集まっている。

神様が黒猿の群れに近付くと、静かに。

まるでモーセに割られた海のように、道を空けた。

神様の背中を追って、人集りの中心に行けば。

胸に刺さったナイフからドス黒い液体を垂れ流しながら、黒猿が仰向けで倒れていた。

身体と全く同じ色であるためか、一瞬ナニか分からなかったが。

匂い、周囲の反応から。

それが、血液。死体だと予想できる。

「これって」

「そうですね。死体です」

まるで二重人格のように、よそ行き顔の神様は。堅い口調で事実を教えてくれる。


神様は、辺りを見回してから柏手を打って。

「はい。解散してください!」

そう言った。


すると。集まっていた黒猿達は、唯一色を持った歯茎を見せながら、離れて行くのだった。真っ白の歯がいくつもこちらを見つめていて、いささか気色悪い。


「どうして」

どうして、仲間が死んだのに、どこかへ行くんだ。

神様は、総てを解っているように。

「黒猿一人殺したところで、この森では罪にならないのです。人数によって変わってはきますが」

割り切ったように語った。

それを聞いて絶句した。


地面の上、僕の目の前にある黒い死体。漂う鉄の香りが鼻を刺してきて。

逃げたくなるが。

あの黒猿達と同じになってしまうような気がして。

思い止まって。

「……ありえない」

無理矢理に正論を絞り出す。

「ありえない?そうかいなあ。正論やろかあ。どうやろなあ」

神様がいつものはんなりとした口調で指摘してくる。

「殺人はダメです。流石に。はっきりと。……分かります」

「お前には黒猿が人にみえてん?」

「動物を殺すのも良くないです」

頑なに譲らない僕を、神様の顔を覆う、狐面の目がにやりと笑う。

「じゃあ、どうすんの?」

「うぇっと」

「ウエットに富んだ回答はい、どうぞ?」

だからと言って、どうする事も出来ない。行動力の無さに対して、開き直ってしまっている、僕は何も出来ない。

神様は答えをくれた。

「犯人捜すんか?」

「捜したら、良いことありますかね」

「私はおもろい」

僕の肩を撫でる神様は、あっけらかんと言ったが、そんな言葉でも。

僕には、とてつもない原動力になる。

それほどまでに僕は彼女を、身勝手に神格化してしまっていた。




















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まるで不定形で無色透明な 狐木花ナイリ @turbo-foxing

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