第18話 幸せ

 数年後。


「あなた、こんな所で紅茶を飲んでいちゃ風邪を引きますよ」


「ああ。済まない」


 私たちは、結婚していました。

 

「しかし、私たちが結婚して早3年ですね」


「そうだね。早いもんだ」


 モモ達が処刑された日に、ユヴィリティ様は私たちの婚約を宣言しました。

 最初は国民からの顰蹙ひんしゅくをいただきましたが、今となってはそんな声も皆無です。


「彼らは幸せを築けなかったが、僕らは頑張っていこうと宣言して……早3年だね」


「ええ。そうですね」


「この3年間、色々あったな」


「……本当に、そうですわね」


 ユヴィリティ様が王位に就き、この国の王になったり。

 敵国が攻め込んできたり。

 それを私の演説で、切り抜けたり。


 本当に激動の3年間でした。 

 恐らく、1人でしたら切り抜けることはできなかったでしょう。

 ですけれど────


「……私、幸せです」


「ん、どうしたんだい?」


「あなたと出会えたから、今の私があるのです。あなたがいなければ、きっと……1人孤独に過ごしていたでしょう」


「それは僕も同じだよ」


 ユヴィリティ様と出会わなければ、私は傷物令嬢として日々を無下に過ごしたでしょう。

 1日中本を読み、1日中昼寝し。

 何もしないまま、私は過ごしたことだと思います。


 ですので、本当に感謝しているのです。

 ユヴィリティ様に出会えて、多くの知らないモノを知れました。

 私はとても、幸せなのです。


「キミがいなければ、僕はきっと誰とも恋をしなかったと思う。好きでもない相手と婚約して、好きでもない相手と子を授かる。そんな日々が待ち受けていたんだと思う」


「……でも」


「そう、でもキミと出会えたんだ。心から好きになれる、キミという存在に」


「ふふ。歯が浮きそうなセリフですわね」


「嫌いかい?」


「そんなことありませんわ」


 ユヴィリティ殿下を、抱きしめます。


「モモの死因は、偽ったことですわね」


「そうだね。自分に正直になれば、幸せになれただろうに」


「愚かな女ですね」


「あんな風にならないように、僕らは自分に正直になろうね」


「ええ。もちろんですわ」


 モモは愚かな女でした。

 最期まで自身の罪を認めず、偽り。

 最後には、醜く死んでしまうなんて。


 ヴィルディ殿下も、愚かな男でしたわ。

 容姿以外に何も見ず、真実を見ようともしない。

 最期には精神を崩壊させてしまい、死んでしまうなんて。


「ユヴィリティ殿下」


「なんだい?」


「……愛していますわ」


「僕もだよ」


 私たちは冬空の下。

 熱く、堅い口づけをするのでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妹の方がかわいいからと婚約破棄されましたが、あとで後悔しても知りませんよ? 志鷹 志紀 @ShitakaShiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ