第17話 処刑【モモ視点】

【モモ視点】


「どうして、どうしてなの!!」


 地面にかしずき、首筋に刃を当てられます。

 首筋から深紅の液体が、ツーッと流れるのを感じます。

 

 どうして、私がこんな目に。

 どうして、私は幸せを掴むハズだったのに。

 どうして。どうして。


「うわ……マジかよ、あのアバズレ泣いてるぜ?」


「本当に、下品な女よね」


「王族に取り入ったのも、きっと金銭が目当てだったんだろ」


「そんなバカな女に気づかない第二王子も、クソだよな」


「気分悪ィな。さっさと殺しちまえよ」


 愚民共は先ほどとは打って変わり、私と第二王子に石を投げつけます。

 身体も、心も、どちらも痛いですわ。


 なんで、どうして。

 どうして、私はこんな目に合っているの? 


「……僕が、僕が全て間違っていたんだ」


 ヴィルディ様は先ほどから、ブツブツと何かを続けています。

 どうやら、処刑が結構して精神を崩壊させてしまったようですわね。


「……憐れね、モモ」


「……お姉様」


 お姉様は私を見下ろし、冷たい視線で私を睨み付けてきますわ。


「私は何も悪くないんですの! 助けて下さいまし!!」


「……最後まで罪を認めないなんて、愚かな女ね」


「ぐッ……!!」


 お姉様は私の顎を、蹴飛ばしてきました。


「何をしますの!!」


「モモ、あなたは救いようがないわね」


「何を言っていますの!! 早く助けて下さい!!」


「……モモ、周りを見てみなさい」


 お姉様に言われ、私は周りを見渡します。

 そこには醜い顔で、私たちをそしる愚民共の姿がありましたわ。


「あなたがどれだけ自己保身に入ろうと、国民達はあなたを許さないわ」


「だからなんですの!! 私が何も悪くないのは、何も変わりませんわ」


「……理解できないなんて、愚かな女ね」


 お姉様は深く、ため息を吐きますわ。


「そうね、モモ。最期におもしろいことを教えてあげるわ」


 お姉様は私の耳元に顔を近づけ──


「私ね、第一王子と婚約したの」


 と、告げました。


「え、な、なんで……お姉様が?」


「第一王子はね、私の内面を評価してくれたの。これまで婚約者として厳しい日々を送り、磨き上げてきた私の内面をね」


「だ、だって……お姉様はヴィルディ殿下に捨てられたではありませんか!!」


「ヴィルディ殿下みたいな、容姿でしか人を判断できないグズに気に入られて浮かれるなんて、あなたって……本当に醜いわね」


「そんな……あ、あり得ないですわ!!」


「事実よ、認めなさい」


 お姉様は私から去って行きます。


「いや!! だって!! だって!!」


「お願い、処刑して」


「はい」


「いや!! いや──」


 刹那、私の意識は失せましたわ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る