阻止し生きる
釣ール
危険な歩き
十八歳
令和になってからいいことがなく、子供のように過ごしたくて上京した。
慣れた関西弁も薄れていき、道で鍛えた筋肉だけが自慢だった。
いつもどうやって衝動を阻止するかが威依の課題だった。
同じ言葉に同じ威圧。
友情というより搾取。
誰かが話していたことを真似て金を稼ぎ、本物のおかしい人間が何かを念仏のように唱えるだけ。
「くそっ!」
路地裏で缶を蹴る。
誰にも当たっていないかを確認してさっき傷を負った腕を布で抑える。
いつ死んでもいいなんて綺麗事は言えない。
若くしてどこかで間違えなければ別の道があっただろうと擁護するしかなかった。
それでもこんな筈じゃなかったとは口が裂けても言えない。
すると誰かに見られている気配がした。
路地裏に誰かがやってくる。
こちらの財布でも盗みにやってきたのか?
威依は抵抗するために構え、やってきた人物に手を出すと片手で胸倉を掴まれ抑えられた。
「ただ通るだけの人間に何をする?」
見た感じ威依と同世代か少し上。
なんて力だ。
さりげなく腹を殴られ、財布が奪われることを阻止した。
がはっ。
壁でうなだれるしかない威依。
大切なものは守れた。
そんな気がする。
ここに誰かいれば違ったのかな。
イマジナリーフレンドでもいいから妄想能力も鍛えたかった。
いや、それは現実逃避しすぎだ。
これでいいと納得する。
やる瀬無い方がきっと今日から明日へつなげられるから。
ここだけは十八歳だなと実感した威依だった。
阻止し生きる 釣ール @pixixy1O
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