第5話 A.自分が人のことを言えない生き方をしているから
「あんたも分かっているみたいだけど……ウチ、クラスで浮いてんじゃん? まあ、あんたには及ばないかもだけどぉー」
「……同レベルじゃね? お前とあたし」
「あーあーうるさい! もう勝手にしろ! でもウチ、あんたとは違う人間なんだからね!」
「そりゃそうだろ」
「とりあえず聞けし!」
「ああ、早く話せ」
「……ふんっ!」
成は喜奈子に膨れっ面を見せ、話を再開させた。
「……もう見りゃ分かるだろーけど、ウチめっちゃ頑張り屋なんだかんね! オシャレとか友達作りとか、すっげー頑張ってんだよ! まあウチ自身が、そういうの好きだからやっているってのもあるけど! ……その結果も、まあ見りゃ分かるだろーけど」
興奮気味の成だったが、一気に声が暗くなった。その変化を見た喜奈子は、これは何かあるなと思った。そして、とりあえず今は何も返さずに、成の話を聞き続けようとしている。
「いつも笑顔で挨拶してもさ、ほとんどの子がウチにドン引き状態でさ……。お昼も色々な子たちに、一緒に食べようって言って仲間に入れてもらったけど……何かウチがいると変な空気になっちゃって……。みんなウチに遠慮しちゃっているってゆーか、ぶっちゃけウチのこと嫌っているってゆーかぁ……。まあボッチ飯も便所飯も絶対に嫌だから……毎日違うグループに、お邪魔させてもらっていたんだけどね! でも、さすがのウチも疲れちゃったかもなーって病んでいたらさ!」
暗くなっていた成だったが、急に明るくなった。その様子を見て喜奈子はホッとしたが、まだ成に言葉を返さない。
「あまちゃんが『それ、かわいいね!』ってウチのファッション、褒めてくれたの!」
「……へぇ……」
志代ちゃんらしいな、と思いながら喜奈子は声を発した。成も笑顔で話し続ける。
「そのときウチ、めっちゃ嬉しくなってさ! ありがと~って、あまちゃんに泣きながらハグしちゃった~!」
「ああ……やっぱり距離感とかメンタルとか、お前おかしいんだよ色々と」
また喜奈子は成に呆れたが、それを聞いた成は「うっせ!」とだけ返した。まだまだ話は続く。
「でもでも! あまちゃんはウチのこと、全く嫌がってなかったかんね! 他にもウチの生き方とか性格とか、めっちゃ褒めてくれたしさぁ~! んもうマジあまちゃん大好きなんですけど!」
志代との出会いなどを思い浮かべて、成は楽しそうだ。そんな成を喜奈子が不思議そうに見ていると、成は「何だよ、言いたいことあんなら言えし」と喜奈子に言った。すると喜奈子は口を開いた。
「お前の性格を志代ちゃんが褒めたって、それ本当なのかよ……」
「はあ? 嘘じゃねーし!」
「……まあ確かに、志代ちゃんは嘘を吐くような子ではねぇな。お前と喋っているときも、楽しくなくはなかったみてぇだし」
「その妙に頭にくる言い方、マジで何なの?」
また長々と争いが始まりそうな気がした喜奈子は「良いから続けろ」と言った。その言葉を聞いた成はコロッと表情を変え、喜奈子は「やれやれ」と心の中で呟いた。
「それからだな~、あまちゃんとウチが仲良くなったの! あまちゃんは絶対にウチを無視とかしないで笑って挨拶してくれるし、いつもウチのアクセとか髪とか褒めてくれるし……めっちゃ嬉しい~! あまちゃん、ウチとお昼食べてくれるんだよ! あまちゃんがクラスで浮いちゃうのはウチが嫌だから、たまに食べてもらうんだけどね! でも、あまちゃん毎日食べようって言ってくれるんだ~! ねーそれマジ優しくね?」
「ああ、優しいな」
「あっ」
「……何?」
どうやら何かを思い出したような成を見て、喜奈子が首を傾げた。
「そういえば……あんたウチの性格は否定しても、生き方は否定してなくね?」
「どうしてそんなこと言うんだよ」
「だって、あんた……あまちゃんがウチの性格を褒めたことは疑ったけど、生き方を褒めたことについては何も言わなかったじゃん!」
「……よく気付いたなぁ、そんなこと。意外に鋭いっていうか、ちゃんと人の話を聞いてんのかよ」
「にっ、憎まれ口で誤魔化そうとしてんのバレバレなんですけどぉー?」
喜奈子は図星であったが、ここで怒るのはバカみたいだよな、と冷静になって話をすることにした。
「それは……あたしも人のこと、言えねぇ人間だからだよ」
「……ふ、ふーん……?」
「おいおい……お前が気になっていたことについて答えてやったのに、その態度は何だよ」
「い、いやっ……ウチは別に、あんたに質問なんか全然してねーよ!」
「あっそ。そりゃ悪かったな」
何やら焦っている成に対して、少しだけしか喜奈子は言い返さなかった。色々と面倒臭くなりそうだったので、それで終わらせることにした。
ギャルヤン!~似て非なる彼女たち?~ 卯野ましろ @unm46
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