2話 初めて友達が出来た

「今から出席とるぞー」

「アツマ~....イノウエ~.......。」


出席確認しているとき、外で体育をしているのを雎が見ている。

「暑そう....昼に動きたくないな....。やっぱり動くなら夜がいいな。」などと呟いている。


雎は、高校に通っている。偏差値はまぁまぁだが成績もまぁまぁである。

本人曰く、雎の一日は忙しい。朝は学校に行ってそれなりの勉強をする。

といってもほとんど寝ている。ただ留年すると眞人がかなり怒るので留年しないように、気を付けながら過ごしているらしい。

学校から帰ると、仮眠をとり課題を終わらせ晩飯を済まし、仕事をしに行く。

晩飯といってもちゃんとした晩飯ではなくインスタントや弁当が多かった。

ただ最近は葵草と暮らしているので、ちゃんとしたご飯をイヤイヤ食べさせられている。

帰ってきて最終的に寝るのは3時頃である。

睡眠時間は少ないが、本人曰く慣れているらしく、問題ないらしい。

ただ最近は、葵草と暮らし始め、相変わらず喧嘩が多く多少ストレスが溜まっているらしい。


(なんでアイツと暮らさないといけないんだよ。おかげで寝不足で疲れてるし...。)

と、雎は葵草のことを考えて、イライラしている。

そのおかげで誰の声も聞こえなかった。


「天馬~...おい‼天馬」

出席確認している担任が雎に呼びかける。

周りの生徒が雎に視線を向ける。

周りの生徒は、普段静かで無表情な雎が険しい表情をしているのを見て少し驚いている。雎は他の人に興味がないので、友達が出来た事が無い。そしてクラスの皆から距離を置かれている。

後ろの席の男子生徒が担任の声に気づいてない事に気づいたのか、

「天馬君。呼ばれてるよ。」

と声をかけた。


「あぁ...はい.....。」

と雎は担任に返事をする。

「ちゃんと人の話を聞いておけよ。」

と注意をしてきた。

雎は少し驚いていている。

(これも葵草のせいだ) とまたさらにイライラしていた。


ホームルームが終わったとき、後ろの席の男子生徒が声をかけてきた。

「よ。俺、寺本凱一(てらもと かいち)って言うんだけど知ってる?」

と声をかけてきた。

雎は少し嫌な感じがした。なぜなら少し雰囲気が葵草に似ているような気がしたからだ。


「ごめんあんまり分からない...どうした?俺に用事?」

雎は少し困惑していた。

今さっきも言ったように友達が出来た事が無いから人とまともに会話をしたことが無い。


「そっか...知らないかぁ...同じクラスになってちょっと経つんだけどな。」

と少し苦笑いをしていた。

「特に用事はないんだけどさ~、今さっき運動するなら夜がいいとか言ってたけど、夜になんかしてる感じ??ちょっと気になったから声かけただけなんだけど迷惑だった?それならごめん‼前から仲良くしたいなって思っててさ。」

と申し訳なさそうに話す。

最近席替えをして後ろの席になっていた凱一はたまたま耳が良く、雎が呟く意味不明な言葉が気になっていたようだ。


申し訳なさそうにしている凱一をみて雎は凱一は葵草と比べて良い奴だなと直感で感じた。

ただ、今さっき呟いたことをどうやってごまかそうか悩んでいた。

殺し屋をしている以上、正体がバレると自分の命が狙われるためバレないように気を付けないといけない。最悪バレたら殺さないといけないというルールがあるのも事実。


「迷惑じゃないよ。ちょっとランニングしてる....」

(まぁ走ってるのは事実だから嘘はついてないよね...)


「ランニングしてんの⁈以外だな!やっぱ人は見かけによらんなぁ~。」

「家どこら辺?俺学校のすぐ近くなんだけどさ、近かったら一緒にランニングしようぜ!」

凱一は雎が迷惑と感じていないことを知り、うれしくてたくさん話を持ち掛けている。


 雎:「ごめん。俺電車で来てるから.....」


凱一:「そっか...残念。」


(夜は仕事もあるし家に来られたら困る)

雎は少しめんどくさそうに凱一と話をしている。

ただ不思議と居心地は悪くなかった。


凱一は友達もいて雎とは正反対の性格をしているが、人柄も良く雎と移動教室を一緒に行ったり、世間話をするまでの仲となった。


昼休み、凱一の友達が、誰とも話さなかった雎と凱一が一緒にいるのが気になっていた。

「お前らってそんなに仲良かったっけ?」 

と、雎と凱一に聞いてきた。

雎は基本的に凱一意外と話さないから、というより話し方がわからないから黙っておくことにした。


友達に対して凱一が、

「今日の朝話初めてさ!!友達なんだよ!!雎は結構いいやつだしさ!!」

と答えていた。


(こいつやっぱりいいやつだ。葵草とは違う。これが友達なんだ....)

それを聞いて、雎はこれが友達なんだと心の中で歓心していた。


雎:「ごめん、遅くなったけど俺、天馬雎。これからよろしく。」


凱一:「こちらこそよろしく!!」


それからというもの凱一と友達付き合いをして学校生活を送っていくことになる。

そして雎に初めての友達が出来た。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

from above むぎはと @mugihato_2438

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ