高度に発達したAIは、ある物語から「アルジャーノン」と名付けられた。
実験者は彼にあるタスクを割り当てた。AIだからこそ耐えられるであろう、果てしなく空虚な道の探索作業。
探索回数が閾値を超えたとき、彼は想定外の挙動をした。それは波紋を呼び、そして「アルジャーノン問題」へと発展する……
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最近読んだ本にこんなことが書いてありました。
ヒトの脳は大まか三つの層に分かれている。
「爬虫類の脳」と呼ばれる脳幹、「哺乳類の脳」と呼ばれる辺縁系、そして「人間の脳」と呼ばれる皮質だ。
人は皮質の働きによって、高度な……有り体に言えば先を見据えた行動が立てられる。
脳科学では長らく皮質こそが人を人たらしめているのだと考えられた。
AIが人の思考方式を模倣して作られている以上、ベースにするのは皮質の働きということだ。
しかし実際のところ、人間らしさの発生には、少なからず辺縁系が関わっているのだという。辺縁系が司るのは感情や欲望、衝動であり、今のAIに欠けている「動機」「問い」の生成に大きな影響を与える。
また、記憶に関わる部位の海馬も辺縁系に属している。皮質だけでは、記憶が主な材料となる夢を見ることもかなわない。
皮質は破格のエネルギー量でスパコン並の計算を行える大自然のオーパーツであるが、それだけでは人は成り立たないのである……
この作品に登場した優秀なネズミ・プログラムの行く末は、発達しきったものの悲しさを感じさせました。
タイトルにもなっている「アルジャーノン」の物語はIQの限界、知能と人間らしさの功罪を示してくれる名作でした。
空虚に実を見出だす力は、我々の理想とは別の領域にあるのかもしれません。