ラブ・グラム【love gram】

夕陽工房 / Yuhi Factory

重い

 重い恋とはなんだろう。


 LINEがや通話がひっきり無しに飛んでくる。

 他の異性と話したら最後どうなるかわからない。

 好意の確認を頻繁にしてしまう。

 尽くしすぎてしまう。


 偏見が大いに含まれているが、こんなところだろうか。


 ところがこの世界は、そう簡単なものではない。



 重いのだ。に。


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「なぁ、やっぱもうあの女とは別れなよ」

「……なんでさ」

「いやだってさ、お前もう見てらんないもん」

「そんなに?」

「あぁ。お前あの子と付き合ってから、いくら太った?」

「50kgくらい」

「50!?やっぱおかしいって!お前ら重さ釣り合ってないんだよ。」


 この世界では愛情の重さ、それも相方との重さの差異が、直接身に降りかかる。


 愛が軽めの男に愛が激重な女性をくっつけると、男の体が重くなってしまい文字通り身を滅ぼすのである。難儀な世界だ。


「じゃあどうすれば」

「そんなの、愛が釣り合う子を見つけるしか無いだろうに」

「いやそんなの「無理とは言わせないぞ」」

「今は、マッチングアプリでも大体の重さをプロフに書いたりしてるだろ?見つけれてないのは、お前が一歩を踏み出してないからだ」


 とはいえ、解決策は前述の通り。愛の合う子を見つけるしか無い。


 だが残念ながら男っていうものは単純でおバカな生き物であるがゆえに、そんなこと考えずに生きがちだ。


 好きならばそれでいいのだ。

 愛は世界を救う。

 愛さえあれば加算される重さなど、誤差でしか無い。

 そもそも恋愛とは、その程度の差異なんかで解消するようなものでもない。


 まぁ概ね間違ってはいない。

 間違ってはいないが、この世界では間違っていた。


 愛の誤差によって空虚から発生した質量【ラブ・グラムlove gram


 1組のカップルが50kgの差異を生み。

 1組の夫婦が30kgの差異を生み。

 1人のアイドルが7,499,970kgの悲しき差異を生んだ。


 こうして質量を無から次々に生み出したことにより、本来軽微で済むと予測されていた質量は爆発的な膨れ上がり方を見せた。

 最終的に新世界実験用サーバー[code : love gramラブ・グラム]は、多数のエラーを吐きながらシャットダウンされていったのであった。


 尚、予想外のルートが示されたということで、ある意味実験は成功である。



 おしまい?

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ラブ・グラム【love gram】 夕陽工房 / Yuhi Factory @yuhiasahi

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