2024年1月31日の夢
あれっくま
唐突な意識の覚醒。
薄暗いビル街を歩いている。
不自然なほど綺麗に区画整理されている、ビルと、倉庫。
上を見ると、明かりの並んだ屋根。
そうだ、ここはシェルター。
少し離れた広場に有る巨大なモニターが、有翼の少女の演説を…もう一人の少女との語り合い様な、茶番じみた…
恐らく、見た人間のパニックを抑えようとしてるのだろう…が『ここ』の社会情勢を語っている。
…平易な表現を使っているのに、私の耳には、ざっとしか入ってこない。
柱を兼ねているらしいビルには、明かりがついていない。
そんな、どこか生活を感じられない、薄暗い街にあふれるのは…制服…セーラー服姿の少年少女たち。
多分高校生ぐらい。
それぞれに大きなバッグを抱えている所を見ると、避難してきたのだろうか?
一様に短い黒髪に黒い猫耳を不安げに動かし、尻尾を自らの足にしっかりと巻き付けている。
出身地ごとにだろうか?数十人ずつ通りの角や倉庫の前の窪んだ場所に集まっている。
…誰も、スマホも携帯も持ってないな。
その中を、歩く。ずっと、歩く。
誰も私に声をかけようとはしない。
…見えないふりをしているのかも知れない。
ビルの窓に反射した、『私』の姿が目に入った。
うん、猫耳だ。そしてセーラー服姿で、女の子だ。
それだけなら、良かったのだけど…
上着の後ろにスリットが有り、そこから黒い翼が生えている。
有翼猫、という異形…羽根っぽく変形しているだけで飛ぶことは出来ない、恐らく遺伝子異常で発現すると言われるモノ。
多分、ここでの扱いも『異物』なのだろう。
このあたりで、これ、夢なんじゃないかな?とは思ったけど、気にせず更に、歩く。
…シェルターの『壁』に辿り着いた。
開いたままのでっかいシャッターと、その向こうの長い登り階段。
避難?した割には、役人とか軍人っぽい人が見張ってるわけでもない?誰も居ない。
明かりも非常灯っぽい、あんまり明るくないオレンジ色のものが付いているだけだし…この施設は現役なのだろうか?
廃施設に急遽逃げ込んできた?…あの人数が?
さっきの街頭モニターの内容が理解できていれば、事情がわかったのかも知れないけど…
何も知らないしわからない。
でも、空が、見たい。
何とか頑張って階段を登りきると、丘の上の公園に偽装された施設の中に出た。
やっぱり明かりは最小限、人も居ない。
足跡がそんなに付いていない所を見ると、他にも出入り口があるのかも知れない。
木が多く植えられており、周りがよく見えないけど…その向こうに、木よりも遥かに大きな壁のようなものが見える。
…既にここは防衛施設の中なのだろうか?
木々に隠されるように作られた石畳の道を歩いていくと、下りの石段に行き着いた。
その先には道路、その向こうは……現代日本の感覚だと、刑務所?異様に頑丈そうで窓が小さい建物と、
私の出てきたシェルター入り口とその建物を囲う…高さ2~30m、厚さも凄そうな壁だった。
石段を降り、アスファルト舗装された道路に降りる。
センターラインも、歩道を示す線もない所を見ると、公道ではなく施設内の通路なのかも知れない。
眼の前のワイヤーで編まれた塀の切れた部分の、開放されたゲートが開いた先に幅広の道路が見える。
左手に先程の建物と、正面には壁の外に出るゲートが有るようだ。
建物の脇まで歩いてくると、その威容がよく分かる。かなり壁が厚く作られているようだ。
道路沿いの、通用口のような所の窓から、職員と思われる…中世の看護師のような、やたら頑丈そうな服を着た白衣の天使たちが見えた。
ふと頭に『軍事病院』という単語が浮かぶ。
防衛拠点を兼ねた病院なんだろうか?
こちら側は裏口なんだろう。そこにいる看護師さん達(頑丈そうなナースキャップ…キャップ?を被っているが、様々な尻尾を持った女性たち)も、
私を見て引き留めようとはしない。が、ちょっと微笑んで手を振ってくれた。うれしい。
装甲シャッターが内側上に…多分、非常時はその自重で入り口を塞ぐんだろうソレの付近にも、軍人らしき人は居ない。
…地下に居た子達は何だったんだろう?今は平時?軍時?
避難訓練か何かの割には深刻そうな表情してたけど…
シャッターに更に近づくと、よく見ると左右にトーチカのような物が塀に偽装されていることに気がついた。
撃たれたくないし、なるべくゆっくり歩いて進む。…が、人の気配はない。
…そのまま通り過ぎてしまった。
壁を出ると、2階分ぐらいの下り階段になっていた。
その先は道路と、さらにその先は斜面になっており、その向こうに地方都市、といった風情の市街地が見えた。
…飛べる気がした。
祈るように胸の前で手を組んで、大きく深呼吸。翼を広げて、階段の上から身を投げ出す。
風を掴む感覚。風を視る感覚。
翼をはためかせる度に遠くなっていく地面。
航空力学とか重量比とか、そんな無粋なものと『あ、これ間違いなく夢だ』という思いが『有翼猫の私』に交じるが…気持ちいいので無視。
飛ぶ、翔ぶ、飛ぶ。
高度たぶん2~30mぐらいの所を飛ぶ。時折高度を落として建物の作りや市街の感じを見ると…2~30年前位かなぁ。
携帯の基地局っぽいものは見えないし。
ここの『私』の感覚だと、海岸と平行に飛んで、山地に当たったら左…内陸へ飛びたい。
市街地を抜けて、潮風よけの松林の間を走る、海岸道路の上辺りを飛ぶ。
…道路の上を飛びたいんだってば。
……あ、まずい風に流されて海上へでちゃう。
海面が、水が、ものすごく怖い。
こんな所で猫要素だしてこなくてもいいのに!
風を『視る』と、もう少し上だと風向きが違うっぽいので、頑張って翼をはためかせて…うきゃぁ!?風向きが変わる境界で掻き回されて、回転…
あ、よかった落ちてく先は市街地…よくない広い所、広い所…何とか身体を捻って…
何とか道路に落着。
翼のお陰で減速できたし、多分猫要素のおかげかなぁ…そこそこの速度で地面に落ちたのに、ちょっと転んだ?ぐらいの痛みで住んだ。
…あと、道路走ってたバスが停留所に止まってくれたお陰で、轢かれずに済んだ…
何事かと飛び出してきた、運転士さんごめんなさい…
翼を畳んで平謝りするけど、バスの時間のことより私の怪我の心配をしてくれる…いい人だぁ。
運転士さん、おとーさんに似てたなぁ。…初めて見るけど。
有翼猫の私の、父なんだろうな。
異世界おじさんを小綺麗にした感じの人。
やっぱり私は私と違う…と思った所で目が冷めた。
2024年1月31日の夢 あれっくま @AREX507
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