後輩から貰ったチョコレートは、非常に心地のよい甘さだった。まるで僕の好みを知り尽くしているかのごとく、甘味と苦味の塩梅は完璧で、僕は噛むのがおしい、と思った。


 幼馴染と後輩から学んだ「変化」の本当の意味を頭の中で反芻しながら、僕はチョコレートを噛む。

 中には、深みのある苦いアーモンドが入っていた。

 その苦さ加減は甘いチョコレートと食べるにはちょうどいい具合で、そんな仕掛けを楽しみながら、僕はまた遠くにいる後輩に思いを馳せる。


 噛んでも噛まなくても、どちらにせよ美味しいってことか。やっぱり、敵わないなと思った。


 もしこのチョコレートに名前をつけるとするなら。

 親しみを込めて、僕は「スウィートビター・チョコレート」と、そう名付けたいと思う。

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スウィートビター・チョコレート 杞結 @suzumushi3364

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