【読み切り版】幼馴染の鬼娘は体育館の天井に挟まったボールを取ることができる。~そして、そのことを知っているのは俺だけである~
幼馴染の鬼娘は体育館の天井に挟まったボールを取ることができる。~そして、そのことを知っているのは俺だけである~
【読み切り版】幼馴染の鬼娘は体育館の天井に挟まったボールを取ることができる。~そして、そのことを知っているのは俺だけである~
四百四十五郎
幼馴染の鬼娘は体育館の天井に挟まったボールを取ることができる。~そして、そのことを知っているのは俺だけである~
「やっべ!!天井にボール挟まった!!」
体育の授業中、俺のクラスメイトが投げたハンドボールが体育館の天井に挟まってしまった。
「モモイチ~あれ取りたいんだけどなんかいい方法ない?」
クラスメイトが俺に解決方法を求める。
「スマン!俺、天井の高さまでは跳べん!スポーツテストの成績も平均より少し上くらいだし!」
体育館の天井は床から約10メートルのところにあった。
とてもじゃないが、俺の跳躍力では跳べない。
「いや、そんなことはわかっているよ~こう、都合のいい道具とかさ~」
「……西遊記の孫悟空にでもお願いして如意棒貸してもらおっか」
「ファンタジックなこと言うなよモモイチ~」
「オマエだってさっき俺にファンタジックな跳躍力を求めたからお互い様だろ」
しかし、俺は知っている。
単純な跳躍力のみで天井のボールを取ることができる人を。
『ビイイイイイイッ!』
隣で行われている女子の授業にて、シュートが決まったことを宣言するブザー音が鳴り響く。
「おっモモイチ、お前の許嫁ちゃんがまた点とっているぜ!」
「言っとくが、アイツは俺の許嫁じゃないぞ。……かけがえのない友人ではあるけど」
俺には、幼馴染の定義に当てはまる友人が1人いる。
彼女の名は天童アルコ。
角と圧倒的身体能力を持つ『鬼人』と呼ばれる特殊体質の少女である。
彼女なら、天井のボールを取ることができるかもしれない。
「おまたせモモくん、部活の助っ人とかしていたらさ、こんなに遅くなっちゃった」
放課後午後6時、体育館には俺とアルコ以外誰もいなかった。
「それでさ、話って何かな」
運動着を着たアルコが首をかしげつつ、俺の顔を見つめる。
アルコは、腹筋の割れた筋肉質な体や額から生えたカッコいい二本角とは裏腹に、のほほんとした雰囲気や顔つきをしている。
俺はそのギャップをとても愛おしく思っている。
「もしよかったら天井のボール、取って欲しいなと思って」
「なんだ……そういうことか。それくらいなら、すぐにでもできるよ」
そう言いつつアルコは靴ひもを結びなおし垂直跳びを始めた。
「……いまさ、体育館に他の人、いないよね」
「うん、いないよ」
「じゃ、本気出しちゃっても大丈夫か」
そう言うとアルコの垂直跳びの高さは1メートルを超え始めた。
普段、アルコは誰かを傷つけないようにするべく、有り余る力をあえて抑えている。
本人にいわく、『スポーツテストの最高得点がギリギリとれるくらいの力』を基準に抑えているのだという。
そして、普通の鬼人の身体能力もせいぜいその程度であった。
そのため、アルコが体育館の天井に挟まったボールを身一つで取ることができると思っている人はクラスメイトにいないのだ。
何度か跳ぶうち、アルコの跳躍はどんどん高度を増していく。
常識を超えた、神々しさすら感じる運動神経。
運動着から見えるお腹にすら、神秘を感じてしまう。
俺はまた、彼女に惚れていた。
やがて、跳躍は天井付近にまで到達し、天井に肉薄したアルコはボールを軽く押した。
そして、ボールは思いきり地面にぶつかり、何度もバウンドしながらやがて俺のもとに転がっていった。
「これにて、一件落着」
アルコが俺に向かって、達成感とカッコよさとかわいさを兼ね備えたような顔でそう宣言した。
幼馴染の鬼娘は体育館の天井に挟まったボールを取ることができる。
そして、そのことを知っているのは俺だけである。
【読み切り版】幼馴染の鬼娘は体育館の天井に挟まったボールを取ることができる。~そして、そのことを知っているのは俺だけである~ 四百四十五郎 @Maburu445
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます