第32話 大月千尋 16歳 ―December②―

 クリスマスはもう再来週に迫っていた。私からメールを送らなければ連絡も来ない状況で、ますます国見君の気持ちがわらかなくなってきていた。


 志保から「国見から連絡きた?」と尋ねられる度に「来てない」と答えることを繰り返しているうちに、私ばかり悩んでいるようで馬鹿らしくなってくる。


 私が悩んでいる間も、もしかしたら国見君は私から連絡が来ないことに関して、特になんとも思っていないのかもしれないのだ。


 素直に私から連絡をすればいいとわかっていても、この一週間待ってみても国見君から連絡が来ないという状況で、私も少し意地になっている部分がある。


 モヤモヤしているうちにまた一週間が過ぎ、クリスマスは一週間後に迫っていた。


 二人の間に流れる不穏な空気に苦い記憶を思い出してしまう。一応付き合ってはいたけれど、実際には中身は何もなかった中学生の頃のことが脳裏をよぎる。あのときは突然フラれてしまったわけだが、今回はそんなことにならないように、私から再び連絡をしてみることにした。



[二週間ぶりだね。明日の夜は会えるかな?]



 夕食を食べ終えて、自分の部屋のベッドに座り、わざと「二週間」という時間を強調したメールを送った。すると、すぐに国見君から返信がきた。



[久しぶりな感じがするね。オッケーだよ。]



 久しぶりな感じがするなら、メールか電話でもしてくれればいいのにと思ってしまう。この二週間の間に、一度くらいは国見君から連絡があるかと期待していたが、結局連絡はこなかったし、寂しさと失望感が募っていた。私が勝手に期待していただけと言えばそれまでだけれど、付き合っているのだから二週間の間に一度くらいは連絡をくれてもいいではないか。


 そこまで考えて、やはりこれは私のわがままなのだろうか…、と思考が停止する。毎日じゃなくてもいいから、たまには国見君から連絡をしてほしいと思うことも、たまには国見君から誘ってほしいと思うことも、わがままなのだろうか。こんなこと言ったら重いと思われてしまうだろうか。


 でも、本当は毎日でも会いたいし、もっとくっついて座りたいし、歩くときにも手をつないでいたいし、できればギュッと抱きしめてほしい。どれか一つでもいいから国見君からしてほしいと思ってしまう。


 そんなことを考え始めると、どんどんモヤモヤした綿あめのような不満が膨らんでいく。しかし、同時に「明日会ったときにはもしかして…」と期待もしてしまう。



[ありがとう。じゃあ、また明日ね]



 不安と不満と期待が渦巻く中で、メールを返信した。


 クリスマスが一週間後に迫っているせいなのか、どこか焦りを感じていた。



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