第31話 大月千尋 16歳 ―December①―
12月に入り、期末テストに向けて放課後に教室で自習をしていると、志保が隣の席に座って声をかけてきた。
「千尋はクリスマスは国見とどっか行くの?」
「ううん、まだ特に決まってないよ」
「そうなの?私は彼氏と出かける約束したけど、もう今月だよ?」
志保に言われるまでもなく私もクリスマスを気にしてはいたが、国見君と話していてもその話題はほとんどでない。
一度「クリスマスはどうする?」と国見君に聞いてみたことがあったが、「どうしようか」と言っただけで話は終わってしまっていた。
相変わらず「会おう」と誘うのは私からで、国見君から誘われたことはない。クリスマスくらいは国見君から誘ってほしいと思ってしまうが、これはわがままだろうか。
「この間、国見君に聞いてみたけど、あまり反応なくて…」
「そうなの?国見、積極性なさすぎじゃん。っていうか、千尋と国見って二人でどっか出かけたりしないの?」
志保からはよく彼氏とデートに出かけた話も聞いたりしているが、私と国見君はいまだに休日にどこかに出かけることもなく、家や小学校で会うことを繰り返しているだけだ。
「二人で出かけたことはないかな…。だいたい学校帰りに会うことがほとんどだよ」
「マジか。付き合い始めて3か月くらい経つよね?」
「うん、今月で3か月…」
「だったらクリスマスくらいはデートしたいよねぇ」
「もう一回、私からクリスマス誘ってみたほうがいいかな?」
私が尋ねると、志保は「ん~」と言って腕組みをしながら目を閉じて、何かを考えている様子だ。少し待っていると、志保が目を開いた。
「いや、ここはもうちょっと待ったほうがいいよ。だいたい、いつも千尋から誘ってばっかりでしょ? 国見は千尋に甘えすぎだよ」
「そうかなぁ…」
「そうだよ!」
たしかに私も国見君から誘ってほしいという気持ちもあるし、いつも私から誘ってばかりで、国見君がどれくらい会いたいと思ってくれているのか心配でもあった。告白してくれたのは国見君だが、それ以降、時間が経つにつれて国見君が私のことをどう思ってくれているのかがいまいちわからなくなっていたし、「私のことどう思ってる?」なんて聞けない。
「…うん、じゃあもう少し待ってみようかな」
それからはわざと「会おう」という誘いもしないようにしてみたが、やはり国見君から誘われることはなく、メールのやりとりもないまま一週間が過ぎた。
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