第28話 大月千尋 16歳 ―under the starry sky③—
校門を出たところで、いつも通り「じゃあ、おやすみ」と言って別れようとしたとき、不意に「もう少し国見君と手をつなぎたいな」という気持ちが湧いてきた。
「ねぇ、国見君。ちょっと手出して」
自転車に乗ろうとしている国見君に声をかけると、「何?」と言って右手で自転車を支えながら左手を出してくれた。
少し照れくさかったが、私は国見君の冷たい左手を両手で包んだ。
「大月さんの手、本当に温かいな、ありがとう。でも、大月さんの手が冷えちゃうね」
国見君が心配してくれるが、こんなふうに手をつないだり包んだりできることに幸せを感じていた。顔が赤くなっていないか心配だったが、今夜は月が出ていないおかげで顔色まではわからなそうだ。
「私はホッカイロがあるから大丈夫だよ」
「そうだった」
国見君が笑う。
「こうすれば、国見君はホッカイロ持ってこなくても大丈夫だね」
思い切ってちょっと恥ずかしいセリフを言ってみた。
「たしかに、ホッカイロはいらないな」
そう言って、国見君の笑顔も少し照れくさそうな笑顔に変わり、二人でニヤニヤ笑った。
手を離すのが名残惜しかったが「じゃあね」と言ってそれぞれの家路についた。
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