第17話  大月千尋 13歳 ー勇気を出して⑤ー

「あ…」


 朝、いつものように昇降口で靴を履き替えようとしたとき、靴箱に紙袋が入っていることに気づいた。さっそく国見君がノートを書いてくれたことが嬉しくて、今すぐにでもノートの内容を確認したいくらいだが、誰かに見られても恥ずかしいので鞄の中にしまった。


 この時間に靴箱にノートが入っていたことを考えると、国見君もいつもよりだいぶ早く登校したようだ。


 鞄の中のノートが気になったまま一日が過ぎていったが、今日もまた国見君と話はできなかった。しかし、鞄の中に国見君との交換日記があると思うと、昨日ほど落ち込んだ気持ちにはならなかった。


 家に帰るとすぐに自分の部屋にこもった。


 少しドキドキしながらノートを開くと、国見君も1ページ埋まるくらいの日記を書いてくれている。国見君のページにも何度も書き直した跡があり、少し黒ずんでいて思わず笑ってしまった。


―――なるほどぉ。


 国見君は数学とか理科は苦手だけど、国語だけは少し自信があるらしい。確かに、国語のテストだけは点数が良かった印象がある。他にも、好きなゲームのタイトルを書いてくれてあるが、私にはさっぱりわからない。ゲームは全然詳しくないが、国見君の好きなゲームを調べてみようか…。


 いろいろ考えながらニヤニヤしながら、何度も何度も読み返して、すぐに私も二度目の日記を書くことにした。


 日記を書いていると、聞きたいことが山ほど浮かんでくる。部活ではどんなことをしているのか、好きな本や映画はあるのか、好きな食べ物は何かなど、他愛もないことを知りたくなってくる。


 二度目の日記もほとんど1ページ埋めてしまったが、一昨日ほど時間はかからずに書くことができた。




 翌日になり国見君の靴箱にノートを入れたが、それ以降ノートが私に返ってくることはなかった。



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