第13話 大月千尋 13歳 ー勇気を出して①ー
バレンタインデー翌日の昼休みに、国見君からこっそり小さな手紙を渡された。何か声をかけようかと思う間もなく、国見君は歩いていってしまった。
手元を机に隠しながら中身を見てみると、「はい、お願いします」とだけ書かれていた。ということは、私たちは付き合っているということだ。胸の奥からじんわりと温かな嬉しさが広がり、思わず口元がほころんでしまい慌てて周囲を見回したが、誰もこちらを見ていなくてほっとした。
付き合えることにはなったが、一体どうしたらいいのだろう。後先のことを深く考えずに感情だけで突っ走ってしまったが、いざ付き合うとなるとどうしたらいいのかがわからない。とりあえずはもっと国見君と話がしてみたいと思うが、たしか国見君はまだケータイを持っていないし、クラスメイトがたくさんいるところで自然に声をかけられる気がしない。
国見君から声をかけてほしいとも思うが、もともと国見君が私に話しかけてくることは少ないし、同じ班のときにも思ったように話せなかった。
私から告白したのだから、まずは私から何か動いたほうがいいのだろうか。
一人で悶々と考えていると、あーちゃんが隣の席に座り声をかけてきた。
「どう?国見君から返事きた?」
「うん、オッケーだったよ」
手でオッケーサインを作ってみせると、「おー!やったじゃん」とあーちゃんも喜んでくれた。
「ありがとう。でも、これからどうしたらいいのかな?国見君、ケータイも持ってないし」
「そうだねぇ。まぁ、普通に声かければいいんじゃない?」
机に頬杖をつきながら当たり前のように言うが、あーちゃんのように気軽に声をかけられないのが私なのだ。意識するほど声をかけられなくなるし、何を話したらいいのかわからなくなってしまう。
「…うん、でもうまく話せない気がする。手紙にしようかなぁ」
「手紙かぁ。国見君が返事書いてくれるか微妙だよね。とりあえず電話してみたら?」
「でも、国見君ケータイないよ」
「親のケータイとか借りられるんじゃない?」
少し考えてから私は答えた。
「…うん、一応聞いてみようかな」
そうは言ったものの、やはり国見君に直接声をかけることができずに、結局は手紙を書くことにした。
手紙には電話をしたいことと、電話番号を教えてほしいことを書いた。手紙を渡すことも照れくさかったため、手紙は国見君の靴箱に入れて帰ることにした。
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