エピローグ-①
洋館を出ると、十二月の冷たい風が頬を刺した。雨はすっかり上がっていて、うすい靄がかかった上空を半月が淡く照らしている。
入る時は気づかなかったが、どうやらここは新興住宅街らしい。サンタやトナカイ、英語でメリークリスマスと記された電飾が、家のベランダや壁で嬉しそうに点滅している。そうか、クリスマスはもう三日後か。そんなことにも気づかないぐらい余裕が無かったここ最近の自分がなんだか滑稽で、思わず苦笑してしまった。
不思議な展示物を見たからなのか、それとも館長に不満を全て吐き出したからなのか。アパートを出てきた時と現状は何も変わっていないのに、心は少しクリアになっていた。
スマホを取り出してLINEを開くと、十数件のメッセージが届いていた。送り主は見なくてもわかっている。おそらく私たちは、二人でいることに少し慣れ過ぎたのだ。でもそれは決して悪いことではなくて、こんな不思議な夜に時折出会わせてくれる。
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