第4話

「結婚して欲しい」とタカシから告げられたのは、二時間ちょっと前。二人でテレビのバラエティ番組見ながら、夕食に何を食べるか話し合っていた時だった。

「たまには和食が良いな」と献立のリクエストをするようなトーンでいきなりプロポーズされた。それがあまりににも不意打ち過ぎて、私は思わずアパートから飛び出してしまった。


 彼のことが嫌いではもちろんなくて、むしろ逆。大切にしているからこそ、二人の関係が変化することを私は極端に恐れていた。

 休日にはデートをして、時にはお互いの家に泊まって身体を重ね合って。いつも言い争っていた両親を見て育った私は、今の二人を壊してまで結婚したいとは、どうしても思えなかった。


 もちろんそうした私の考え方は、タカシも薄々感づいていたのだろう。じゃないと、こんな大事なことを急に言うはずが無い。彼はそこまで無神経じゃないのだから。未来に向き合おうとしない私の狡さを見透かされた気がして、恥ずかしくなってしまったのだ。

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